なぜコロナ禍で投資を始める人が増えたのか?

» 2021年02月11日 06時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 コロナ禍に見舞われた2020年は、新たに投資を始める人が増加した年でもあった。ネット証券各社は大きく口座数を伸ばし、スマホ証券大手2社も相次いで50万口座達成を発表するなど、特に若年層、初心者の投資参入が目立つ。

1年で133万口座の開設があった楽天証券を筆頭に、ネット証券の口座開設は大きく伸びた。楽天証券の新規口座開設者の3分の2は、20代、30代だ(楽天証券決算資料より)

 なぜコロナ禍において、新たに投資を始める人が増えたのか。マネーフォワードが行った「コロナ禍の個人の家計実態調査2021」に、そのヒントがありそうだ。調査によると、「新型コロナの影響で、生活防衛の意識が高まった」と回答した人は全体の8割にのぼった。

 そして生活防衛のために行ったことは、うち約2割が「投資を始めた」であり、約3割が「投資資金を増やした」という行動だ。過半数が、生活防衛のために「投資」を選んだということになる。一方で、これまでの傾向とは異なり、生活防衛のために貯金を始めたり、貯金額を増やしたという人は4割にとどまった。

「生活防衛」のために、投資や貯金を行った比率(マネーフォワード)

 「貯蓄から投資へ」という、金融庁が長く推進してきた取り組みは、こと若年層に限っては、奇しくもコロナ禍によって実現しつつある。

 一方で、日経平均株価にとどまらず、昨今若年層に人気の米国株でも、各種指数は過去最高を更新している。銘柄によってはロビンフッダーなどと呼ばれる新たな集団が、仕手的な動きで株価を釣り上げるなど、バブル的な様相も帯びてきた。新たに投資を始めた人も、こうしたマネーゲームに乗っているのだろうか?

 実はそうでもない。マネーフォワードの調査では、生活防衛のために投資を始めた人の7割が「NISA・つみたてNISA」を使って投資しており、投資先も投資信託が約5割だ。フィデリティの調査でも、ビジネスパーソンのうち、確定拠出年金の利用者は38.6%、NISAは31.8%に達しており、長期運用を前提とした何らかの非課税口座を利用している人は過半数にのぼっている。

「生活防衛のために投資を始めた人」が行っている投資(マネーフォワード)

 生活防衛意識から投資に向かう行動には、公的年金への不安もありそうだ。フィデリティの調査では、8割が公的年金への懸念を示している。しかし、不安の内容は年代によって異なる。20代では28%が「制度が廃止されるので不安」と答えたのに対し、50代では56%が「給付減額で不安」だとした。

 興味深いのは、自分の公的年金の給付額を知っているかどうかで、投資行動に大きな差が出たことだ。給付額を知っている人の中で投資をしている人が7割を超えるのに対し、知らない人は3割弱しか投資を行っていない。

公的年金額の理解が投資家比率を引き上げるのかもしれない(フィデリティ)

 生活防衛意識が高まった人のうち、88%が「コロナ収束後も、生活防衛を継続したい」(マネーフォワード調査)としている。コロナがきっかけで始まった長期投資のトレンドは、定着していくのかもしれない。

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