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「プリコネ」大ヒットの舞台裏 一度たたんだコンテンツを復活させたCygamesの手腕とはCygames木村唯人専務インタビュー【後編】(2/3 ページ)

» 2021年02月18日 18時40分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

アニメ化された「プリコネR」 20年で最大のヒットに

――「グラブル」と「プリコネR」は対照的なゲームデザインと言えますね。一度たたんだコンテンツを復活させた手腕は評価されるべき功績だと思います。

 うまくいってよかったです。ゲームがある程度複雑な上に面白いのが「グラブル」の特徴だと思います。一方で複雑なことを考えなくてもプレイしているうちに自然にレベルが上がり、強くなっていく面白さがあるのが「プリコネR」ですね。

――「プリコネR」はどういったユーザー層に遊ばれているのでしょうか。

 30歳前後の男性が多い印象です。ただ、高校生の男の子や、女性のユーザーも少なくありませんので、20〜30代の若者を中心に幅広い層で遊ばれていると思います。

phot 「アニメRPG」をうたうだけあり、随所に2Dアニメーションが挿入されている

――「プリコネR」は「アニメRPG」というゲームジャンルをうたっており、随所にアニメーションムービーが流れるのも魅力です。アニメーション制作は外注していましたが、やがて「CygamesPictures(サイゲームスピクチャーズ)」という、Cygamesの100%子会社が制作に入っているのも特徴です。内製のメリットについては中編で聞きましたが、アニメではどのような狙いがあったのですか。

 通常のアニメ制作会社では、どうしてもテレビなどの受注が優先されてしまうんですよね。また1つのゲーム開発だけで会社の業務を押さえておくのも難しい実情があります。そのような経緯から、アニメ制作に自社の子会社に入ってもらうことにしたんです。

phot イベントとメインストーリーでは、更新されるたびにアニメーションが追加される

――結果、今では毎月イベントとメインストーリー更新の度に新たなアニメーション動画が配信されるようになっていますね。これこそ内製の強みで、なかなか他社にはまねできないことだと思います。

 子会社に制作ラインとして入ってもらっても、アニメをこのペースで提供していくのは相当大変でした。実際にはCygamesPicturesだけでなく、外部の制作会社にも依頼しながら何とかやっています。それ以外に、開発チーム内にも毎月実施するイベントのエンディングアニメを作ったり、外注するための設定資料の作成や監修をしたりするセクションもあるのですが、アニメ制作を全て内製化するつもりはなくて、今ぐらいがちょうど良いバランスだと考えています。

――20年4月から6月にかけて、「プリコネR」もテレビアニメ化され、20年で最大のヒットになりました。テレビアニメの制作会社もCygamesPicturesで、自社でメディアミックス展開を成し遂げた形になります。なぜ、このタイミングでメディアミックスを仕掛けたのでしょうか。

 実は、「プリコネR」を出す直前くらいからアニメ化の企画は動き始めていました。ゲームが「アニメRPG」をうたっているのもあって、メディアミックスの相乗効果は高いと判断していました。大体アニメは企画が動き出してから放送開始まで2年くらいかかるのですが、ゲームをリリースする前から仕込んでいたものがようやくあそこで出せた形ですね。

アニメ化が生んだ相乗効果

――アニメ版「プリコネR」は、オープニング曲や作中BGMの多くはゲームから流用していて、原作であるゲームにかなり忠実なメディアミックスをしたと思います。ストーリーの流れこそ違うものの、「プリコネR」らしさは全く変わらずでした。

 アニメ版「プリコネR」は、監督の金崎貴臣さんが「プリコネR」をやられている方で、「プリコネR」ユーザーが喜ぶポイントを知り尽くした上で、「プリコネR」を知らない人を楽しませるにはこういう形がいいという試みが色濃く反映されていました。ゲーム内のBGMをそのまま使用したほうがいいというのも、監督の発案でしたね。他にも「こうしたら絶対面白い」との監督の意向が随所に入っています。実際に、すごく面白くなっています。

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――一方、アニメ版のストーリーの流れは原作のゲームとは異なっていて、ゲームからのファンの間では当初驚く人もいました。結局は「プリコネR」らしさは変わらず、すんなりと違和感なく受け入れられるものでしたが。

 メインストーリーの描き方は、確かにゲームとは全く違うものになっています。ただ印象としては、ゲームのファンからも「『プリコネR』のアニメってこうだよね」と受け入れられるように仕上がったと思います。監督が「プリコネR」を理解し尽くした上で丁寧に作っているからこそですね。

 アニメ単体として、新規の方が見ても分かる面白さと、「プリコネR」のユーザーが見ても違和感なく楽しめる。この2つの両立が上手にできた作品だと評価しています。多くは監督に任せていましたが、僕も「ここはもっとこうしたほうが『プリコネR』っぽいよね」と指示を出しチェックしていました。

phot アニメ「プリンセスコネクト! Re:Dive」のブルーレイ1巻のパッケージ画像。2020年で最も売り上げたアニメビデオパッケージとなった

――ブルーレイのビデオパッケージも1巻だけで5万枚以上を売り上げ、20年のアニメ作品では1位です。既に2期のアニメ化も予定していますが、アニメ化によってどのような相乗効果が生まれましたか。

 新規の方はもちろん、古参のユーザーにとってもストーリーに興味を持ってもらえたのは大きいですね。実は「プリコネR」は、ゲームをやっていても(ゲームの)ストーリーをスキップしているユーザーが少なくありません。ストーリーを既読にすると、ガチャを回せたりスタミナを回復したりできる(アイテムの)「ジュエル」がもらえるからです。

 ですので、それまで(ストーリーを)飛ばしていたユーザーの中には、アニメを見てからゲームのストーリーにも興味を持つ人が増えました。これは大きかったと思います。もちろん、本来の狙い通りにアニメからゲームをやり始めた人もいます。知名度が上がるだけでなく、ストーリーにも興味を持ってもらえたことで、ゲームをやっていなくてもみんなで「プリコネR」の話ができるようになったことはすごく大きいです。共通の話題が増えることによって、リアルだけでなくSNSでの拡散力も変わってきますから。相乗効果は非常にありましたね。

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 また、具体的な数字は申し上げられないのですが、ゲームをプレイしてくださる方も増えていて、SNSを見ていると、アニメによってゲームを始めたという声も多い印象です。加えてゲームからはしばらく離れていたけれども、アニメを見て復帰した人も非常に多かったですね。

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