投資額は10年で17倍! 急拡大する「フェムテック」市場を働く男性こそ知るべき理由職場の多様性担保にも必要(4/5 ページ)

» 2021年02月26日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

フェムテック市場は課題解決が遅れている分野

 先ほど説明した市場の中でも、不妊治療に取り組む女性や男性は年々増加しています。海外では体外受精サービスは拡大している市場です。19年の世界の市場規模は1兆4000億円ですが、23年には1兆8800億円に達すると予想されています(出所:「IVF(体外受精)サービスの世界市場 - COVID-19による成長と変化 2020年〜2030年」 The Business Research Company)。

 米国保健福祉省によると、100組当たり12〜13組のカップルが不妊問題を抱えているそうです。また、インドのコミュニティー・メディスン誌によると、インドだけでも1500万〜2000万人の不妊症患者がいるというデータもあります。日本でもすでに16人に1人は体外受精で生まれており(18年度で5万6979人)、今後も拡大する傾向にあります。

 不妊率の上昇により、人々は体外受精サービスを利用することが自然となり、結果的に市場の成長を押し上げているのです。

 また、女性の収入増や、女性が男性よりも健康関連の支出が多いことなども市場拡大が続く一要因となっています。

 しかし、それ以上に、女性の課題解決が十分にされていないことが、現状のフェムテック分野を成長させる最も大きな理由なのではないかと思います。

 fermataのフェムテックECサイトにはさまざまなフェムテック商品が掲載されています。

世界のフェムテック商品の一部

 体内で経血を受け止める月経カップなどのフェムテック商品がずらりと並んでいるのですが、一目ではそれが何なのかが分からず、まるで服飾雑貨のようです。世界にはこのようなフェムテック商品が山ほどあり、同社がセレクトして品ぞろえしています。

 同社のECサイトの月間売上高は、20年4月のオープン時と比較して21年1月には約21倍に成長しているとのことです。また、同社はフェムテックの市場規模を詳細に調査しており、フェムテック商品・サービスの開発サポート、フェムテックに関するワークショップ開催などの依頼が大手企業からも相次いでいるようです。それだけフェムテックの認知度が向上し、購入しやすい空気感になってきているといえます。

 「例えば、月経カップも60年前にはすでに市場には出ていたのですが、日本人女性はどのように使ったらいいか分からず、広がらなかったアイテムです。でも洗えば何度でも使えますし、今の品質であれば10年は使えます。緊急時などのいざという時にはこれ一つあれば済みますし、この商品の良さに気づいて使用する女性が増えています。こうしたアイテムの利便性が認知されるようになれば、フェムテック市場はまだまだ成長する可能性があるではないでしょうか」(杉本さん)

 国によって文化、宗教、習慣が違います。特にフェムテック商品はタブー視されることが多く、今まで見たことがないような商品も多かったため、普及しにくかった面があります。これまではクローズドな世界に閉じ込められていた商品とも言えます。

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