――コロナ禍の巣ごもり需要で有料会員の数が増えたということですが、何か理由はあるのでしょうか。
第一波の時は増えましたね。あのタイミングで「コロナ報道に注力する」という方針を掲げたのは功を奏した理由の1つだと思います。新型コロナウイルスに対して気を付けるべきことは何か、新しい生活様式にどう適応すればいいのかなど多くの課題が出てくる中で、情報が錯綜していました。
そこで、社内のサイエンスに強い記者や経済記者のリソースをほぼ全てコロナ報道に集中しました。例えばリモートでの働き方についてどこよりも先に特集したのがNewsPicksだと思います。他にも、WEEKLY OCHIAIでは慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授を招いて解説をしてもらったのに加え、編集部の独占インタビューでプロピッカーの佐山展生スカイマーク会長や星野佳路星野リゾート代表に出てもらい、その直後にHORIE ONEでも観光や航空産業の展望を語ってもらいました。
こうした記事と番組作りを3月、4月の早い時期にしたことで、有料会員も増えていきました。
――テキストの記事だけでなく、動画番組を精力的に制作していることがNewsPicksの差別化につながり、ビジネス的な強みにもなっていると思います。通常、取材専門の記者だけでは(テキストと動画を)横断した展開までは広げにくいように思いますが、どういった人材を採用しているのでしょうか。
私自身もともと扶桑社の雑誌『週刊SPA(スパ)!』で編集長をしていたのですが、新聞や雑誌だけではなく、テレビ業界の出身者も集めています。同じテレビ業界でも、テレビ局で記者やディレクターをしていた人だけでなく、制作会社でプロデューサーやディレクターをしていた番組作りのノウハウがある人を集めているのが特徴だと思います。
――テレビ業界ではテレビ局と制作会社の間にはヒエラルキー的な関係がありますが、それぞれの出身者が一緒になって同じ仕事をしているわけですね。
その通りです。テレビ局出身の人も、制作会社出身の人も、それぞれの特性を生かし仕事をしています。加えて私のように紙の媒体で編集をしていた人間も同じチームで仕事をしています。それぞれの出身媒体にとらわれず、ウェブ時代にふさわしい新しい表現方法を模索し続けています。
――(記事や番組の制作スタッフ以外の)デザイナーやエンジニアなどの仕事は外注しているケースが多いのでしょうか。それとも社内でデザイナーやエンジニアを採用しているのでしょうか?
エンジニアもデザイナーも社内で採用しています。自前で専用アプリの開発や、動画配信などを手掛けている以上、エンジニアとの綿密な連携は欠かせません。NewsPicks自体、多くの読者や視聴者がPCではなくスマートフォンで見ますから、記事や番組もどうすればアプリを通じたスマホユーザーに届きやすいかを常に考えています。
デザインに関しても、インハウスデザイナーを置くことによってコミュニケーションツールの『Slack』やオンライン会議で迅速に連携できます。これにより、情報やデータなどを視覚的に表現した「インフォグラフィックス」という新しい表現手法の記事も強みにすることができました。ここを社外に発注してしまうと、NewsPicksのコンセプトを一から説明しないといけなくなり、情報や作業の共有にどうしても時間がかかってしまいます。
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