東北新社・NTT・総務省のエリートたちは、なぜハイリスクでも高額接待を実行したのか「密室」問題から読み解く(4/5 ページ)

» 2021年03月09日 07時30分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 1点目は、悪用されやすいということです。何らかの事情で他者に聞かれたくない会話をするわけですから、密室は法に触れるような怪しげな会話の場として用いられやすくなります。密室で行われた接待が汚職事件に発展してしまうなど、不正の温床となりかねない危うさを有しています。

 2点目は、無意識的な場合も含めて、見えざる支配関係が生まれがちなことです。ある分野で強い影響力を持つ人が密室を意図的に構築した場合、影響力を持つ者と持たない者との間で、自ずと密室の中だけの見えざる力関係が成立することとなり、それがやがて支配関係へと発展してしまう危険性があります。

 3点目は、同質性が強化されやすいことです。誰を密室に参加させるかを考えたとき、気が合わない人や好まない人は必然的に排除されやすくなります。その結果、自ずと濃い同質性を有する一部の人たちだけで密室が構築されていきます。同質性のくくりとしては、「気が合うかどうか」はもちろん、同郷や同窓、同年代や同性といったさまざまな領域が考えられます。

 これら3点のデメリットは、時に負の連動をも引き起こします。

 例えば2点目に挙げた見えざる支配関係は、密室の中で悪意と連動してどんどんエスカレートしていきかねません。それは、贈収賄のような大仰な場だけでなく身近な密室でも起こりえます。

 例えば、親と子の関係性が家庭という密室の中でひずみ、支配関係に発展してしまった場合、親の悪意が児童虐待へとつながってしまう危険性があります。逆に子が支配する側になった場合は、家庭内暴力へとつながってしまうことも考えられます。夫婦間のDVや学校内でのイジメなどにも同じことがいえます。

 また、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森前会長が、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」という趣旨の発言をしたとされる問題の背景には、3点目に挙げた同質性強化と見えざる支配関係の連動が潜んでいる可能性を感じます。

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