なぜ東北新社は「首相の息子で官僚を接待」というアウトな戦略を選んだのかスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2021年03月02日 09時39分 公開
[窪田順生ITmedia]

 庶民派イメージを売る菅義偉首相の長男が、総務省から許認可を受ける放送事業会社・東北新社の部長として、幹部官僚らに7万円のステーキやらの高額接待をしていた。

 しかも、その長男には「コネ入社」の疑惑も持ち上がっている。東北新社の創業者が菅首相の支援者で多額の献金をしているからだ。

 それが事実なら、パパの力で総務大臣秘書官となり、パパのパトロンの会社に入り、パパの威光で総務省幹部に懐柔させていたことになる。「既得権益の打破」を訴えていた菅首相が、実は政治家という特権的立場をフル活用して身内に利益をもたらす、ゴリゴリの「既得権益おじさん」だったという事実に、政治や行政への不信感が高まっている人も多いだろう。

幹部官僚らへの高額接待が問題に(画像はイメージです)

 筆者もまったく同感だが一方で、報道対策アドバイザーとしてさまざまな企業不祥事に立ち会ってきた立場として、それよりも関心があるというか、不思議でしょうがないことがある。それは、なぜ東北新社の経営陣が「首相の息子に官僚を接待させる」という明らかにアウトな戦略を何年も続けていたのか、ということだ。

山田真貴子内閣広報官の辞職等についての会見(令和3年3月1日、出典:政府インターネットテレビ)

 東北新社のWebサイトに掲載された、中間報告概要によれば、執行役員が「自ら主導をして多数回の会食を実施」、その執行役員を管理監督すべき立場にあった取締役執行役員も「自らも複数回の会食を主導」、さらに前社長の二宮清隆氏も「自ら上記会食に同席」していた。

 つまり、「総務官僚への接待攻勢」は、なにも菅首相長男が自分の人脈をひけらかすために勝手にやっていたことではなく、東北新社経営陣が会社の方針として決定し、自らも進んで動いていた「事業戦略」なのだ。

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