東北新社・NTT・総務省のエリートたちは、なぜハイリスクでも高額接待を実行したのか「密室」問題から読み解く(5/5 ページ)

» 2021年03月09日 07時30分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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 そもそも「女性がたくさん入っている理事会」に焦点が当たって世間の話題になるのは、「女性がたくさん入っている理事会」自体が世の中に珍しいことの裏返しです。つまり、世の中の理事会は総じて男性中心の密室を生み出しやすい性質を持っていることになります。

 男性中心の密室の中で、もし見えざる支配関係が生じれば、その支配者もまた男性になる可能性が高いと言えます。男性支配者による男性中心の密室になれば、同質性はさらに強化されて、女性はより排除されやすくなってしまいます。

 ここであらためて、冒頭で紹介した総務省の幹部たちの接待問題を振り返ってみると、気になるのは国家公務員の中でもエリートといわれる人たちが、高いリスクがあるにもかかわらず、なぜ接待に応じたのかという点です。

 リスクがあっても接待に応じざるを得ない何らかの事情があったのかもしれません。もし、そこに密室特有の見えざる支配関係などが影響していたのだとしたら、この問題はとても深刻です。

疑惑の決定、その裏には密室あり?

 今も、あらゆる組織運営の中で密室が意図的に作られています。組織運営の中で作られる密室は多くの場合、一定以上の権限や地位などを有する人々で構成されます。

 「えっ、その人事いつの間に決まったの?」

 「何で、長年の取引先が突然変更になったの?」

 会社生活など、組織と関わる場面において、そんな唐突な出来事に疑問を抱いた経験がある人は、決して少なくないはずです。それら唐突な出来事の背景には、得てして意図的に作り出された密室が関与しています。私たちはそんな「密室文化」の中で社会生活を営んでいるといっても過言ではありません。

 密室とは、密室の支配者にとってはこの上なく居心地の良い空間です。しかしながら、その空間に居心地の悪さを感じる者にとっては、耐えがたいほど苦痛な空間でもあります。

 誕生日にサプライズパーティーを開こう! といった目的で構築される“善意の密室”はほほえましく、大いに歓迎するところです。あるいは、情報がオープンになることで誰かに危害が及んだり不要な心配をかけたりしてしまうような際に構築される“配慮の密室”も必要だと思います。

 それに対し、一部の権力者や支配者だけがいごこち良く過ごし、オイシイ思いをするような“私利私欲の密室”は、社会にとって百害あって一利なしだといえるのではないでしょうか。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業。テンプスタッフ株式会社(当時)、業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て2010年株式会社ビースタイル入社 。2011年より現職 (2020年からビースタイル ホールディングス) 。複数社に渡って、事業現場から管理部門までを統括。しゅふJOB総研では、のべ3万人以上の“働く主婦層”の声を調査・分析。 『ヒトラボ』『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰。NHK『あさイチ』など、メディア出演・コメント多数。 厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。 男女の双子を含む4児の父。


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