不祥事・炎上はなぜ絶えない? スタートアップ企業のトラブル事案から考える、危機管理広報の在り方働き方の「今」を知る(2/4 ページ)

» 2021年03月12日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

コンプライアンス実現の心構えと、危機管理のポイント

 トラブルや不祥事に起因するネガティブな報道や批判は予期できず、コントロールすることも困難だが、いざというときにやるべきことは決まっている。日々意識して備えておきたいものも交えながら解説していこう。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

(1)普段から、「世の中の声」に真面目に向き合うこと

 「社内的には問題ない」「この業界ならどこでもやっている」といった言い訳は通用しない。「業界の常識」とか「暗黙の了解」といったものから極力距離を置き、これまでの経緯などを全く知らない一般の人がネガティブ報道を聞いたらどういった印象を持つか、イメージすることが重要だ。普段から自分たちの業界や職種、会社や仕事は「世の中からどれくらい嫌われているのか?」と意識しておき、いざ事件が起きたときにはその前提で対処していくことができればよいだろう。

 実際に報道が進行している状態になってからでも、都度ネットを検索すれば「世間の声」はいくらでも拾うことができる。そこから、「世間はどんな点に注目しているのか」「何が問題視されているのか」といったポイントが分かるはずだ。その論点と向き合って対応していく必要がある。

(2)迅速に危機管理対応をし、ファクトベースの情報を出し続けること

 先述の通り、まずはいち早く実態を把握することからだ。実態が分からないまま謝るのも、実態を踏まえずに対応方針を出すのもおかしい。事象と背後の事情も含めて全容の解明を急いでから、対応方針を定め、対策を決めるべきだ。

 問題視されている件について調査を速やかに進めていくと宣言し、皆が知りたいと思っていること、すなわち「誰が」「なぜ」「どうなって」「どんな状況か」を調査して開示していくのだ。そして被害状況、今後の見込み、再発防止策という順番である。

 ここでのポイントは「ファクト」であることと、「出し続ける」ことだ。ここで被害者としての立場を訴えたり、感情が混じったりしてしまうと、「そもそも自分たちが問題を起こしているのに」と余計な反感を買ってしまうことになる。あくまで客観的に事実を伝え続けることで、メディア側も今度はその情報を基に取材をし、新たな報道がなされる可能性もある。

(3)情報の受け手の感情に寄り添うこと

 既存のマスメディアと、ネットにおける危機対応の違いもまさにこの点にある。既存マスメディアはファクトの提示だけでも対応できるが、ネットの場合はそれに加えて「感情処理」というステップが加わるのだ。情報の受け手がどんな感情を抱いているのか把握し、その点をケアする必要がある。

 ネガティブな事件があったのであれば、それに対して経営陣が心を痛めている、といった形で情報の受け手に対する感情面のアプローチが必要だ。報道の受け手が知りたい点に丁寧に寄り添っていくことで、疑念を解消するのである。適切にケアができれば、早期に事実は共有されて報道も収まることになるが、ケアが不適切であれば、いつまでもネガティブな感情が渦巻くことになるだろう。

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