不祥事・炎上はなぜ絶えない? スタートアップ企業のトラブル事案から考える、危機管理広報の在り方働き方の「今」を知る(3/4 ページ)

» 2021年03月12日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

(4)「誤解です」「間違いです」とはいわないこと

 ネガティブ報道の内容が、臆測や単なるうわさなど事実無根のことであれば、つい感情的になり「それは誤解です」「記事内容は間違いです」などと反論してしまいたくなるものだ。しかし、この対応はかえって会社を信頼していた人にまで反発を受けてしまう可能性があるため、要注意である。

 なぜなら「誤解されている」というのはあくまで報道された会社側の主観でしかなく、ニュースや記事の読者、視聴者は自分たちが誤解しているとは思ってもいない。そんな人たちに対して「あなたは間違っている」「あなたは誤解している」といっていることと同じなわけだ。誰しも、間違っているといわれれば気分は良くないし、とくに報道時点でその会社のことを信じている人であればあるほど、「信用していたのに、誤解といわれた」と反発が大きくなる可能性が高い。

 感情的になることなく、あくまで事実を淡々と説明し、違法なところがあったのであれば、「法令順守し、再発防止のためにこんな努力や工夫をしている」といったポジティブな情報を出していくことを心掛けたい。

(5)反論すべきところは反論すること

 「誤解」「間違い」というべきではない、と書いたが、何も「絶対に反論してはいけない」というわけではない。

 感情的な反発がダメなのであって、ロジカルな反証や報道への訂正は必要なのだ。報道されている事象については必要に応じて記録や証拠を開示し、もし名誉き損や理不尽なことがあるのであれば、それによってどのような被害が生じているのかといった検証もした上で、冷静に指摘をしなければ「いわれっぱなし」になってしまう。

 初期段階で世論をウォッチできていれば、報道の論点は早期に把握できるはずだ。批判には真摯(しんし)に対応し、会社側の言い分も伝えるべきだが、その際はメッセージを公にする前に、外部の専門家に冷静な観点から確認してもらってからの方がよいだろう。セルフチェックのみではどうしても「思い入れ」や「思い込み」が混じり意図通りに伝わらないことがあり得る。あくまで客観的な視点を重んじるべきである。

 逆に、「何をいっても意味がない」とばかりに沈黙を守ったり、情報をブロックしたりすることはコミュニケーションのチャンネルを自ら閉じることになる。情報開示は積極的に行うべきなのだ。

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