認知症の金融資産をどう守る? 家族信託をITで民主化するファミトラ(3/3 ページ)

» 2021年03月25日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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ITを活用して家族信託を民主化する

 こうした課題をITを活用して解決しようとしているのが、ファミトラだ。何度も何度も家族会議に同席して契約内容を作り上げるオーダーメイド型の家族信託ではなく、顧客情報をヒアリングし、それを元にITを使って信託組成に必要な情報の型化を目指す。

 「最もニーズが大きいのが認知症時の資産凍結。そこにフォーカスすることで、ある程度型化できるのではないか」(三橋氏)

弁護士が信託組成に必要な情報の型化を目指す(ファミトラ)

 現在の仕組みは同社が「第一段階」と呼ぶもので、顧客情報を入力すると自動的にヒアリングすべき項目が表示され、論点が整理される。例えば「配偶者の特別控除」や「小規模宅地の特例」が使えるかもしれないから確認しよう、ということがすぐに分かる。

 今後、ユーザーが自分の情報を入れるだけで、一定のフォーマットが出力される仕組みを目指す。「契約書の元となるドキュメントをほぼ自動的に出力することにトライしている。弁護士と顧客が委任契約を結ぶが、間に入ってヒアリングを行い、弁護士が契約書を作りやすいフォーマットを用意することで、5万円くらいで済ませられるようにする」(三橋氏)

IFAのJAMとも提携

 ある程度の資産を持っている人にとって、自分が認知症になってしまってからでは遅い。意思決定能力を持っているうちに、家族に財産を管理できる仕組みを用意しておきたい。そんな顧客のニーズに応えるため、ファミトラと提携したのがIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)のジャパンアセットマネジメント(東京都千代田区)だ。

 堀江智生社長は「家族信託に注目していたが、コスト面が唯一のデメリット、ネックだった」と話す。同社の顧客の約2割が潜在的に家族信託のニーズがあると見ており、さらに新規顧客の開拓においても家族信託がフックになると見込む。

ジャパンアセットマネジメントの堀江智生社長

 高齢者、また高齢者につきものの認知症への対策は、大手の金融機関や証券会社などでも重要視されてきている。しかし、ITを活用した低価格化という点では、ファミトラのような技術系スタートアップに一日の長がある。法務、税務、ITをつないでシステムで対応するのは簡単ではないからだ。

 100万円以上のコストがかかるのが普通だったことから、大手金融機関が営業対象としてきたのは1億円以上の資産をもつ富裕層だった。三橋氏は、「3000万から1億円あたりの層にまで、家族信託という合理的な仕組みを広げられるのではないか。これまでと比べて対象世帯数が10倍くらいに広がる」と、市場を見積もる。

 「意思能力をほぼ失ってしまった段階で相談に来るケースがある。後見人をつけるしかなく心が痛む。現在コロナ禍で、コミュニケーションを取らないと認知症は加速する。少しでも気になったら、手遅れにならないうちに動いてほしい」(三橋氏)

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