では、企業の意思決定のスピードには何が影響を及ぼしているのか。個人的には、「派閥争いの激しさ」によるところが大きいのではないかと思っている。
経営幹部の主導権争いはもちろん、誰が次の役員になるとかならないとかいう、社内の派閥争いが激しい組織は議論が紛糾して大事なことがスムーズに決められない傾向がある。これは互いに意見を激しくぶつけ合わせて時間がかかっているのではなく、社内の有力者の顔色をうかがったり、各派閥の面子や立場を配慮するなどの調整に膨大な時間がかかっているのだ。
つまり、「日本企業は意思決定が遅い」という評価が国内外に定着してしまったのは、社内の主導権争いや勢力拡大という、いわゆる「社内政治」にのめり込んでいるような企業が、日本社会に極端に多いからではないのか。
それがうかがえるような調査もある。プレジデントウーマンが2020年10月に働く女性読者1000人を対象にアンケートをとったところ、63.5%が出世する人たちに共通点があると考え、そこに「社内政治」が少なからず関係したと思うと回答した人がなんと85.7%にも上ったのだ。
やれ男女平等だ、やれ公平な人事評価プロセスだ、と叫ばれているなかで、現場で働く女性たちの大多数が、「結局、出世するのは政治力でしょ」という本音を抱いている事実は非常に重い。
しかも、ここで誤解してはいけないのは、「社内政治が激しい会社=民主的な会社」ではないことである。総合人材サービスを展開するアデコが、20〜60代の働く人を対象に人事評価制度に関してアンケートを実施したところ、62.3%が不満をもち、満足しているのは37.7%である。
では、なんでこんなにも日本のサラリーマンは人事に納得していないのかというと、透明性・公平性のある民主的プロセスではないからだ。
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