えっ、まだ? なぜ日本企業の意思決定は「遅い」のかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2021年03月23日 15時13分 公開
[窪田順生ITmedia]

 ちょっと前にある企業で危機管理のオンラインセミナーをさせていただいた後、参加者の方から非常に興味深い意見を頂戴した。

 「日本企業は欧米の企業よりも意識決定が遅いとかよく言われますけど、それは欧米企業よりも組織が民主的だからじゃないですかね」

 いわく、欧米企業は強い権限をもつリーダーが決めたことに対して社員が問答無用で従うので意思決定が早いが、日本企業の場合は、リーダーがそこまで強い権限がないので取締役会や経営者のOBなどさまざまな人たちの意見に耳を傾けてすり合わせていくため意思決定が遅くなっている。これは見ようによっては、日本企業のほうが民主的なプロセスで決め、慎重に判断をしているわけだから良いことではないのか、というのだ。

「日本企業の意思決定は遅い」は本当か(写真提供:ゲッティイメージズ)

 確かに、おっしゃることには一理ある。どんなに意思決定が早くてもそれが間違っていたら意味がない。正しい道を選ぶために議論に議論を重ねて結果として意思決定が遅くなってしまっているのだとしたら、そのやり方を全否定すべきではないというのも同感だ。

 ただ、日本企業の意思決定が遅いのは、そのような民主的なプロセスを重視しているからだというのは正直、違うのではないかと感じている。これまで国内外のさまざまな企業の「危機」に関わってきた経験から言わせていただくと、組織の意思決定のスピードと「民主的」うんぬんはあまり関係がない。

 強力なワンマン経営者が率いる外国企業であっても、「役所かよ」と思ってしまうほど社内の調整や意思決定に時間がかかるケースがある。また、逆もしかりで、経営幹部を社員の投票で決めるほど民主的な日本企業が、まるでITベンチャーのように迅速な意思決定を下すこともあった。

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