えっ、まだ? なぜ日本企業の意思決定は「遅い」のかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2021年03月23日 15時13分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本企業は民主的なのか

 このような日本のサラリーマン独自の現状維持志向が、日本企業の意思決定の遅さに大きな影響を与えていると考えると、「日本企業は民主的」という認識はやはりちょっと違うのではないか。むしろ、現状維持を望む人たちが政治に明け暮れて、権益拡大を求めていく点では、旧ソ連のような共産主義的のほうが近い。

 民主的プロセスを重視しているので意思決定が遅くなる、という主張は、実は日本の政治家からもよく聞かれる。1年も経過したのに医療体制が整えられないコロナ対策はもちろん、選挙のたびに叫ばれる構造改革も遅々として進まず、国民から不満の声が上がっており、その言い訳に使われているのだ。

 ただ、この現象も実はこれまでお話をしたように、「現状維持」「終身雇用」「同族企業」がもたらす「社内政治の激しさ」で意思決定が遅くなっている、という法則で説明できる。

 実は日本の政治家は世界的に見ても異常なほど「現状維持」を好む。民間のことはやれ改革だ、規制緩和だと大騒ぎをするわりに、自分たちの高い収入や汚職、議員定数削減、選挙制度など自分たちの改革はほとんど進めない。庶民に自粛を迫って、自分たちは会合三昧だったように「われらは愚民を導く特権階級なり」という驕(おご)りもあるので、自分たちの立場をあらためる必要はゼロだと考えているのだ。

 そこに加えて、「終身雇用」へのこだわりも強い。一度でも政治家になったら「やり残したことが」とか「高齢者の意見を代弁したい」とか言って、党が定めた定年制を無視して選挙に出続ける。80オーバーのおじいちゃん議員、政治家が山ほどいらっしゃるのがその証左だ。

 そして「同族」については言うまでもない。今の内閣はもちろん、有力な政治家のほとんどは世襲だ。祖父や親、叔父などが政治家でその地盤を譲り受けた政治家が圧倒的に多い。もちろん、子供に継がせて「家業」にしていることは、濡れ手に泡のおいしい仕事だということだ。

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