えっ、まだ? なぜ日本企業の意思決定は「遅い」のかスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2021年03月23日 15時13分 公開
[窪田順生ITmedia]
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衰退させている原因

 このような「現状維持」「終身雇用」「同族経営」と三拍子そろった人たちが、国会でヤジを飛ばし合って熾烈な「社内政治」を繰り広げているのが、日本の政治だ。何か問題提起をしたり、何かを決めるべきだと主張すると野党やマスコミから吊るし上げられるので、議員の立場に固執する人ほど沈黙する。

 大臣などの立場になれば、さらに現状維持に走るので、官僚が徹夜でつくった原稿を棒読みして、揚げ足を取られないようにガマン比べのように同じ言い訳を繰り返す。日本企業の「ムダに長い会議」を、国会議事堂で再現しているだけなのだ。

 残念ながら、意思決定が早くなる要素が全くない。

 人口が右肩あがりで増えて、それにともなって経済も成長をしている時代までは、現状維持の企業と、現状維持の政治家が溢れていても、日本はハッピーだった。しかし、人口減少に転じたことで、その社会秩序はガラガラと崩れてきている。

 「日本企業は民主的だ」「意思決定が遅いのも悪いことばかりではない」など、とにかく日本を正当化したい気持ちは痛いほどよく分かるが、こうなってくるともうそんなに時間の猶予はない。そろそろこの国を衰退させている本質的な原因を直視すべきときではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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