えっ、まだ? なぜ日本企業の意思決定は「遅い」のかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2021年03月23日 15時13分 公開
[窪田順生ITmedia]

「現状維持志向」が強い

  実際、この調査でも人事に不満を感じる理由として、「評価基準が不明瞭」(62.8%)、「評価者の価値観や経験によってばらつきが出て、不公平だと感じる」(45.2%)という声が圧倒的に多い。こんな不透明な人事評価プロセスがまかり通っている時点で、「民主的」とは言い難い。日本のサラリーマンのほとんどは、自分のポジションが「社内政治」によって決められていることを自覚しているが、その政治力学が民主的なものだとは感じていない現実があるのだ。

人事評価制度に不満を感じる理由(出典:アデコ)

 そのようなことを言うと、日本企業ばかりが社内政治にのめり込んでいるようなものの言い方だが、「オレが勤めていた外国企業でも社内政治はかなり激しかったぞ」というようなご意見があるかもしれない。もちろん、「社内政治」は万国共通の現象だ。どんな国にも経営幹部にコバンザメのように寄り添ってご機嫌取りをするビジネスマンはいくらでもいるし、ライバルを引きずり落とすために悪評を流すようなセコい会社員は存在している。

 ただ、日本のサラリーマンたちがのめりこむ「社内政治」と、よその国の「社内政治」ではかなり意味合いが変わってくるのだ。なぜかというと「社畜」という言葉に象徴されるように、企業への忠誠心・依存度がよその国よりも異常というほど高いからだ。

 パーソル総合研究所が19年9月に公表した、日本を含むアジア太平洋地域14の国・地域を対象とした就労実態調査によれば、日本の労働者は「勤務先への満足度」が対象国中で最下位。にもかかわらず、「転職したい」という回答も、「管理職になりたい」と回答も最下位だった。つまり、日本のサラリーマンというのはよその国のサラリーマンに比べて、ダントツに「現状維持志向」が強いのだ。

「管理職になりたい」と答えた割合、日本は最下位(出典:パーソル総合研究所)

 会社に対して文句や不満は山ほどある。しかし、かといって、変化を求めて飛び出すわけでもなく、組織を変えていこうと上を目指すわけでもなく、愚痴を言いながらじっと現状に居座り続ける。どんな仕事をしたい、会社の中でこんな自己実現をしたいということよりも、「会社員であり続ける」ことが、働くことの主たる目標になっているのだ。

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