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コロナ禍でもボーナス支給 “伊豆の名店”に押し上げた「おか田」2代目店主の手腕「年に2回の小言の時間」(1/5 ページ)

» 2021年03月25日 18時22分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

 新型コロナウイルスが国内の経済に大きな変化をもたらし、特に飲食店を中心に厳しい打撃を与えている。都市部はもちろんだが、地方など観光地の飲食店も例外ではない。

 緊急事態宣言が解除され、政府が実施していたGoToトラベルキャンペーン再開の是非が取り沙汰されている。現実的に、大型連休前に全国で再開するのは難しい状況だ。その一方で、GoToトラベルが経営の支えになったと話す経営者もいる。

 キャンペーンによって純粋に観光需要が喚起された点や、旅行先と、その隣接する都道府県で使用できる地域共通クーポンによって、店内の飲食だけでなく、お土産品や持ち帰り品にも消費の影響が広がった効果は相応にある。実際に店側もこうした新たな需要をコロナ禍の出口戦略として見いだしている。

 静岡県南伊豆町にある飲食店「伊豆の味 おか田」もその1つだ。「おか田」は1985年創業の郷土割烹料理屋で、近海で取れたキンメダイを出す店として多くの観光客を受け入れている。近年では、伊豆地方で獲れる世界最大のカニ、タカアシガニを使った料理を出す店としても有名だ。

「伊豆の味 おか田」の看板
世界最大のカニとして知られるタカアシガニ
「伊豆の味 おか田」の外観

 観光ガイドブックなどにも多く取り上げられる南伊豆の名店で、コロナ禍以前は大型観光バスが続々と店の駐車場に並んでいた。だが、その光景もすっかり過去のものになってしまった。それでも2代目店主の岡田正司さんはお土産品の商品開発なども手掛け、時流の変化に果敢に対応しようとしている。

 どのようにして「おか田」を地元の名店に押し上げ、コロナ禍を乗り切っているのか。岡田さんが取材に応じ、その経営手法について語った。

岡田正司(おかだ・しょうじ)1969年生まれ。地元の県立高校を卒業後、飲食関係、旅行業界を8年間経験。1995年お店の移転オープンを機に帰郷、1985年創業した「郷土割烹伊豆の味おか田」の2代目で2008年代表取締役就任。静岡県出身

劣等生だった学生時代

――岡田さんは2008年7月に創業者の岡田正さんの跡を継ぎ、以来12年間、店を切り盛りしています。なぜ店を継ごうと思ったのでしょうか。

 僕、基本的に劣等生だったんですよ。大学は出てなくて、小学校、中学校、高校までずっとすごく劣等生だったのね。成績がものすごい悪かったの。なので生まれてきて褒められることってそうそうなかったんです。高校を卒業して、接客業の仕事をしたりした後に、お店を手伝うようになったんですが、その中でお客さんから「おいしかったよ」と褒められることがありました。それでやりがいを感じるようになったのが、「この仕事をやりたい」と思ったきっかけです。

――お店の経営者として、厨房やホールのスタッフを統括する立場にあるわけですが、気を付けていることはあるのでしょうか。

 今でも自分のことを“劣等生”だと思っていますから、正直自分に自信はないんですよ。なので、「プロに任せろ」をモットーにしています。これは従業員に対してもそう指導していますね。

 変な話、社長の僕は素人なのですよ。何に対しても中途半端だと思っています。職業柄、みんなをまとめていますけど、厨房に立つわけでもない。だから僕は常に「教えてください」という立場なのです。調理のことは多少は口に出しますけど、板前さんに任せて、魚のことだったら魚屋さんに聞くようにしています。特にお店に出入りされる方は皆プロフェッショナルな人たちだから。そういう人の話を聞きながらやったほうが間違いないと思っています。

――いろいろな業者が営業に来ると思うのですが、取引先を見極めるコツはありますか。

 確かにいろいろな方が来られますが、僕はウチに必ず有益な情報を持ってくる人達だと思って接しています。なので僕は出入りされる業者をとても大事にします。その点では、父の代に比べると、お付き合いさせていただいている方はものすごく増えたと思います。

――とすると、既存のルート営業だけでなく、新規の飛び込み営業の人も大事にしているということですね。

 飛び込み営業されている方ってとても勇気があると思うし、そういう人を僕は大事にしますね。特にうちは35年以上やっているお店だから、おか田は取引先が決まっているだろうと思っている人が少なくありません。こうした先入観が地元にはあるんですが、その中で新規で来てくださる方というのは才能があると思うんですよね。

――飛び込み営業を大事にしたことで、何かプラスにつながったことはありますか。 

 純粋に付き合いが増えましたね。今ではお付き合いさせていただいている出入りの業者の数は20〜30ぐらいあるのですが、その中でも3本の指に入るところは全て、最初は飛び込み営業の方でした。こうした取引先は、担当者が変わってもすごく義理堅いと感じています。例えばマヨネーズ1本でも、10円20円安かったらその話をうちに持ってきてくださいます。

タカアシガニの軍艦巻き
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