クルマが持てなかった人にローンを クルマの遠隔制御で金融包摂を目指すGMS(2/2 ページ)

» 2021年03月29日 15時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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属性に代わり行動を元にした審査へ

 中島氏は、これまでの属性をベースにした審査はアナログ時代の限界にあると話す。「顧客の動きを定量的に評価できなかった。支払い能力があるにも関わらず、審査が厳しすぎた」

 GMSでは単にクルマを遠隔で制御するだけではなく、走行履歴や利用履歴を逐次取得している。これらのデータから、何時から何時まで働いているのかなどを推測し、支払い能力などについてのスコアを付ける。

 「高ランクの人には、次のローンを紹介したりする。働きぶりに応じて、支払い額を変動させるダイナミックプライシングも採用していきたい」(中島氏)

 GMSの仕組みに、金融機関も関心を示している。同社の事業は、デバイスを取り付ける前提で顧客を金融機関に紹介し、実際のローンは金融機関が提供する仕組みだ。連携している金融機関は地方銀行が多く、広島銀行、大垣共立銀行など。リース会社やファイナンス会社も積極的に取り組んでいるという。

GMSのビジネスモデル(GMS提供)

 対象とする層は金融機関によって異なり、外国人やパートで働く人、転職直後の人など、いずれもこれまではローンを組むことが難しく、レンタカーを借りていた層だ。金融機関によって異なるが、典型的な金利は12%程度。しかしローンを借りられることで、クルマなしでは難しかった仕事を行うことができる。

潜在的需要は国内でも100万人

 GMSがサービスの提供を始めてから2年。すでに4000人が利用した。中島氏は、「国内でローンを組めずに困っている200万人のうち100万人は対象となる層だろう。年間40万台くらい、新車販売の1%くらいのポテンシャルはある」と意気込む。

 金融にアクセスできないがゆえに、仕事に必要なクルマなどが手に入らない人は、海外でも数多い。同社は、フィリピン、インドネシア、カンボジアの3カ国でもサービスを提供し、グローバルの利用者は1万人を超える。GDP成長率が高く、平均年齢が若い一方で、金融サービスは未成熟。「金融にアクセスできる人は50%程度しかいない」(中島氏)という。

 こうした国々ではローンを申し込めたとしても、審査を通過するのはよくて70%。さらに土地などの担保を別途取る場合もあるという。それだけ融資のリスクが高いわけだ。GMSのサービスを使い、遠隔からクルマを停止できれば、そのリスクも減少する。

 GMSは、こうしたクルマを遠隔から制御する技術と金融をひも付けた部分で特許を持ち、すでに16カ国で取得済みだ。

 今後は、自動車の走行データなどから導き出したスコアを活用し、対象範囲を拡大していくことを狙う。教育ローンや住宅ローンへの応用も検討している。

 一方で事業拡大のカギとなる提携金融機関の拡大にはハードルもある。「担当部門は理解してくれるが、取締役会に諮ったときに、今まで全く貸せなかった層へのローンに一定のアレルギーがあるのは事実。1%でもリスクがあるのを嫌うのが現在の金融機関だ。当社の実績を示すが、金融機関の文化が変わるにはもう少し時間がかかる」(中島氏)

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