一連の経緯は、日本企業の風土改革にも参考になると筆者は考えている。企業は利益を上げるという本来の目標に突き進み、それを忠実に実行するだけで一連のトラブルを軽減できる可能性が見えてくる。
利益を上げることに忠実な組織は、責任の所在もはっきりしており、管理職はどれだけ業績を上げたのか、社員は与えられた業務をどれだけ正確にこなしたのかという部分だけで評価される。「がんばって残業したから評価する」「上司は全人格的にエラいので、服従しろ」といった社風も一掃されるだろう。
仕事の会話が中心となる新しい社風に対して「味気ない」「ギスギスしている」という感想を持つ人もいるかもしれない。だが、情緒たっぷりの交流はプライベートで実践すればよく、わざわざ会社で行う必要はない。しかも、コロナ危機をきっかけに、ビジネスのIT化がこれまで以上に急ピッチで進むのは確実であり、業務はますます個人完結型になる。
「多少、下品な会話もないとスムーズに仕事が進まない」などと言っているビジネスパーソンは、10年後には本当に仕事がなくなってしまうかもしれない。それほどビジネスの質的転換は急ピッチで進んでいるのだ。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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