なぜ京急で社員からの「内部告発」が相次いでいるのかスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2021年03月30日 09時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

内部告発が続く

 実は少し前にも、京急の内部告発が話題になった。20年3月13日に、ニュースサイト『Mynewsjapan』で10年間、京急に勤めた元社員の方が社内の「昭和体質」を告発した以下の記事だ。

 『京浜急行電鉄は“昭和の会社” 退職者続出、欠員続きで13連勤も 「このままでは社員の命が危ない」』

 「13連勤」については冒頭の枝久保氏の記事でも触れられているが、京急では2〜3週に1度週6日の勤務が入るところに欠員の穴埋めで休日が奪われたり、基本給が低いため若手が自ら進んで休日返上をしたりということから、「13連勤」という働き方もそれほど珍しくないのだという。

京急の内部告発が話題に

 このような内部告発の記事がポコンと単発で世にでるのは実はそれほど珍しくない。会社や上司に不満を抱く人が、退職して悪口を言いふらすなんてことはよくあること。名の知れた大企業の場合、それがたまたまメディアに取り上げられているだけなのだ。ただ、そんな内部告発が相次いで、不特定多数の人々から情報が寄せられるようになってくると、話はだいぶ変わってくる。経営陣の刷新、社内風土やビジネスモデルなど根本的な改革を目標とした「現場の反乱」になっている可能性が高いからだ。

 いったいどういうことか、日本郵政グループの「かんぽ不正」が分かりやすい。高齢者を言葉巧みにだまして詐欺的な契約を結ばせた「かんぽ不正」は、郵便局員から西日本新聞に寄せられた内部告発によって明らかになった。しかし、当初はこの西日本新聞の記事に対し、日本郵政は否定していた。

 実は郵便局のノルマがもたらす不正行為は、ウン十年も昔から内部告発されていた。筆者も記者だった若いころには、ノルマをクリアするために年賀状や切手シートを金券ショップに持ち込んだ郵便局員の話を聞いたことがある。つまり、「保険のノルマが最もきつい。一部の局員は、高齢者をだまして売っている」(西日本新聞 2019年7月19日)という内部告発自体は、日本郵政からすればどうとでも言い逃れできるものだったのだ。事実、報道に対して「法令違反があったとは思っていない」とすっとぼけ続けた。

 しかし、ここから日本郵政の想定外の事態が起きる。この報道をきっかけに、西日本新聞に次から次へと内部告発が寄せられて、認知症の高齢者をだまくらかした事例が掲載された内部資料や、保険料を二重払いにしていたことなども内部告発されてしまうのだ。マスコミもこれを後追いした結果、郵政3グループの経営陣が引責辞任し、今年3月24日までに幹部ら3351人が処分されるという大スキャンダルに発展したのは、ご存じの通りだ。

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