なぜ京急で社員からの「内部告発」が相次いでいるのかスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2021年03月30日 09時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

政治との距離

 実はこれは、職人の世界や伝統的な産業でもよく聞く「あるある」だ。現場の職人は時代の変化に合わせて、仕事のやり方をもっと効率的にしたいし、古臭い慣習をやめて最新技術も導入したい。しかし、現場から離れた経営者たちが「オレが若いときは、もっと大変だった」と改革を邪魔する。外野のファンも「やはり昔ながらのやり方じゃないと」と無責任に現状維持を望む。このような全方向から「古い考え方」を押し付けられることにへきえきした若者が、職人の世界や伝統産業から去っていくケースを取材などで幾度となく見てきた。

 これと同じことが京急で起きているとしたらかなりまずい。「古い考え方」の押し付けによって、現場は疲弊して、ヒューマンエラーを多発させる。最悪、これまでは防げたはずの事故も誘発してしまう。かつての福知山線事故後のJR西日本のように、京急も組織改革や社内カルチャーを改めることを余儀なくされてしまうのではないか。

 そこに加えて、筆者が京急で致命的な「内部告発」が明らかになってしまうのではないかと心配しているのには、もう一つ理由がある。それは「政治との距離」だ。

 横浜市民ならばご存じの方も多いだろうが、実は京急は菅義偉総理と深い関係があることで知られている。

 『週刊文春』(4月1日号)の「菅首相長男に一万株 鉄道利権を暴く」という記事の中に詳細が明かされているが、20年前から横浜選出の菅氏を応援してきたのが京急であり、同社の元会長や元社長は代々、菅氏に個人献金を納めるのがルーティンとなっていて、その額は20年で累計1650万円にも及ぶという。

『週刊文春』(2021年4月1日号)

 なぜこんなにも応援するのかというと、もともと菅氏は、運輸族のドンで、国鉄民営化にもかかわった小此木彦三郎・元通産相の秘書をやっていて当初、事務所で担当していたのは、相鉄(相模鉄道)だったが、国会議員になってから小此木氏の鉄道利権を引き継ぎ、02年に国交政務官になったことで、京急とも強固なパイプができたという。

 実はその強い「絆」に関しては、筆者も思い当たる節がある。

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