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育休判明でローン融資拒否! 高飛車な銀行は、これから滅ぶと思えるワケ働き方の「今」を知る(3/5 ページ)

» 2021年04月07日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 2019年におけるわが国の就業者数6724万人のうち、非正規雇用比率は男性が22.8%、女性は56.0%にものぼる。また法人企業は約421万社存在するが、そのうち99.7%は中小企業だ。そして自営業主・家族従業者数も675万人。育休中の給与所得者と同様に、彼らも皆ローン審査はかなり難しいのが現状だ。

 組織に勤めている限り、毎月給与が支払われるため、「安定した収入がある」「返済能力も高い」と見なされやすい。一方で非正規雇用者や個人事業主、中小企業経営者は、事業環境の変化が個人収入にダイレクトに影響する可能性が高く、けがや病気などがほぼ「休業」「収入激減」に直結するため、「ローン返済が滞ってしまうリスクが高い、不安定な存在」という枠組みに入ってしまうのだ。

 実際、「売り上げは普通のサラリーマンの数倍あるのに、ローン審査に通らなかった」と嘆く個人事業主は多い。その理由は、審査基準が「所得金額」だからだ。サラリーマンや公務員のような給与所得者の場合、審査対象は「額面年収」だが、個人事業主の場合は売上から必要経費を差し引いた「所得金額」が対象だ。そして小規模企業経営者の場合は「自身の役員報酬の額面収入」に加えて「会社の利益」が対象となる。

サラリーマンより収入が多くても、ローンに通らないことがある個人事業主(出所:ゲッティイメージズ)

 そのため、住宅ローン審査に備えて、あえて経費を計上せず利益(所得金額)を過大にし、結果として多額の税金を納めるハメになってしまっている事業者もいるようだ。一方で小規模企業経営者が、社会保険料支払いを少なくするためにあえて低い報酬額を設定している場合、所得額が少ないと判断され、審査で不利になってしまう事態にもなり得る。また、多くの金融機関では「直近3年分の確定申告」を基に所得を審査する。そのため、3年以上事業を継続していて、かつ連続で黒字経営なら心配ないが、業績に波がある場合は、その中で最も低い所得額を基準に審査されてしまう。

 これらはあくまで金融機関側の機械的な判断基準であり、目の前の相手が「育休中でもうすぐ復帰することが確定」していようが、「創業2年目の個人事業主で先行投資のためずっと赤字だが、受注が確定しており来期の年商は1億円を超える」状況であったとしても、担当者が個別事情を勘案したり考慮できたりする余地はほとんどないというのが現状なのだ。

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