同席した周小川・人民銀前総裁は「デジタル資産とデジタル通貨は区別するべき。重要なのは実体経済に貢献しているかだ。デジタル通貨は膨大な決済をサポートし、実体経済にメリットがある。一方で、デジタル資産の実体経済へのメリットは何か。私はいまだに分からないから慎重にならざるを得ない。08年の金融危機の背後には、実体経済からかけ離れたシャドーバンク、デリバティブ商品があった」と述べた。
2人の発言は、20年に上海の裁判所が「個人がビットコインを所有するのは合法で、商品属性は法律の保護を受ける」とビットコインの資産性を認めたことも関係していると思われる。ただ同裁判所は当時、ビットコインを含む仮想通貨の販売・交換は中国では違法との判断を出している。
20年10月に公表された中国人民銀行法改正案の意見募集稿は、デジタル人民元を法定通貨に加えることを盛り込む一方で、「どんな事業所・個人もデジタルコインを製造・販売してはならない」と明記し、違反したときの罰金は従来から引き上げられた。
「カーボンニュートラル」「低炭素社会」への取り組みが加速する中、中国メディアは今月、シンクタンクや研究者の調査として「ビットコインマイニングが1年に消費する電力量は、上海市全体の電力使用量1年分に相当する」「中国が60年にカーボンニュートラルを達成するには、ビットコインマイニングを制限するべき」と紹介している。
中国政府にとっては今のところ、ビットコインなどの仮想通貨はデジタル人民元普及のための目の上のたんこぶでしかないだろう。
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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