人民銀行がデジタル人民元構想を明らかにしたのは、Facebookがグローバルデジタル通貨「リブラ(Libra、現Diem)」計画を発表した19年だ。だが、研究を開始したのは14年と世界的にも早い。
背景にはテンセントのスマホ決済「WeChat Pay」がローンチし、アリババの「アリペイ」と競争しながら急速にキャッシュレス化が進み、金融当局が金の流れを追いにくくなるとの危機感があった。
実際、デジタル人民元の市中実証実験が始まった20年秋、中国の金融当局はアリババを始めとするIT企業の金融事業の取り締まり強化に舵を切った。
既存のスマホ決済とデジタル人民元が競合するのか、あるいは協調するのかは中国人消費者にとって大きな関心事項だったが、当局は「既存勢力の力を削ぎながら併存する」ことを選んだといえる。
一方で中国政府は、デジタル人民元が盛り上がれば盛り上がるほど、ビットコインなど政府が認めていない仮想通貨が存在感を増すというジレンマに悩まされ続けてもいる。
中国政府は17年に仮想通貨の取引や発行を全面的に禁じた。「投機を過熱させる」「金融市場や社会を不安定にする」という理由からだが、根底にあるのはスマホ決済同様「政府がコントロールできない金融ツールは排除する」という思考だろう。
習近平国家主席が「ブロックチェーン強国」を宣言し、デジタル人民元やリブラが盛り上がった19年も秋口から社会の仮想通貨に対する関心が高まり、詐欺や違法な投資商品が沸いて出たことから、当初は「世界で最初に法定デジタル通貨を発行する」と前のめりだった人民銀も、「法整備が先」とトーンダウンした。
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