さらに、NFTの取引の場を提供するプラットフォームの多くは相場操縦的な行為への防衛策が不十分である場合も多い。つり上っているNFTの価格については、少数の主体が意図的に作り出した疑いもぬぐえないのが現状だ。
NFT取引を巡っては、“なぜこんなものに◯◯円もの価値が?”という場面に出くわすことがある。しかし、その感覚は間違っていないかもしれない。
なぜなら、このようなマーケットプレイスは本人確認(KYC)が十分になされているとは言いがたいからだ。現状、一人の大金持ちが複数のアドレスを保有し、一方のアドレスからもう一方のアドレスに向けて“入札”してしまえば、どんなNFTでも実質負担ゼロで何億円もの取引事例を作ることができる。
これが株式のような有価証券の場合、金商法159条第1項の「仮想売買・馴れ合い売買」として処罰される恐れがある。これは同一人が、権利の移転を目的とせず、同一の有価証券について売買を相対させることで、あたかもその値段で売買が活発であることを装うことができるためである。
しかし、NFTの法整備は追いついていないのが事実で、本当に自作自演の仮想売買を行ったとしても、それが違法であるかは定かではない。それだけでなく、アドレスの保有者と本人確認情報がひも付けできなければ、NFTのマーケットプレイスがそのままマネーロンダリングや脱税の温床となってしまう可能性がある。
先のチューリップバブルでは、チューリップの球根で家が買えるなど、明らかに異常な価格が群集心理によって肯定されたこともある。しかし、現代におけるNFTについては作られたバブルである可能性もぬぐいきれず、その本質的価値と市場価格のギャップについては大きな注意を払わなければならない。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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