現在、金融業界で起こっているのは、金融機関が金融機能を切り出して、豊富な会員を持つプラットフォーマー企業が金融機能を組み込んでユーザーに提供するエンベデッドファイナンスという動きだ。ここでは、銀行、証券、保険という区分けは馴染まず、ユーザーニーズに合わせて適切な商品を提案していくことが必要になってきている。金融サービス仲介業は、こうしたニーズに沿うものだ。
これが最も顕在化しているのが、家計相談の領域だろう。日本金融サービス仲介業協会の代表理事会長に就任した中村仁氏(400F社長)は、マネーに関する相談をしたい顧客とファイナンシャルプランナーやIFAなどの専門家をマッチングさせる「お金の健康診断」というサービスを提供している。
「顧客の課題は家計に関するものがほとんど。現状で、横断的に解決策を提示できるかといえば、難しい。金融サービス仲介業が横断的にサポートすることで、金融商品という概念ではなく、顧客の家計全体をサポートするサービスが生まれるのではないか」(中村氏)
日本金融サービス仲介業協会の理事に就任した小川裕之氏(SBIネオモバイル証券社長)も、自ら金融サービス仲介業となりサービスを提供することに積極的だ。「若年層に、保険などを提供したいと常々考えていた。ワンストップで初心者、若年層にサービスを提供できるようになった。業界の先頭に立ってモデルを作っていきたい」。新興のスマホ証券であるSBIネオモバイル証券は、顧客の多くが若年層かつ投資初心者となっている。
ただし、金融サービス仲介業を最も活用できるのは豊富な顧客基盤を持つプラットフォーマーかもしれない。既存の縦割りの仲介制度では、金融機関が仲介業者を監督する義務を負う代わりに、仲介業者が利用者に損害を与えた場合、金融機関が賠償責任を負っていた。これがなくなるからだ。自らコンプライアンスの体制を整え、損害賠償にも対応するには充実した財務基盤が必要になる。
これまで証券や保険といった商品をベースに垂直統合されていたものが、商品を提供する金融機関と、それを横断的に取り扱える金融サービス仲介業といった水平分業へと形を変えようとしている。
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