進化を続ける「VTuber」ビジネス、今どうなってるか知ってる?(2/3 ページ)

» 2021年05月13日 20時00分 公開
[将来の終わりITmedia]

「コラボ」から生まれる「箱推し」  

 多くの配信者を抱えるにじさんじやホロライブといった事務所は、その多くの配信で複数人によるコラボ配信を行っている。FPSゲームやポケモン対戦などを複数チャンネル間で横断して行い、互いのファンにコラボレーションからくる面白さを訴える。また「ARK」や「マインクラフト」といった、特定ローカルサーバ内で各配信者が自由にオープンワールドゲームを楽しむことで、突発的に発生するコラボを視聴者は楽しむことができる

 このようなコラボは最も簡単に合計視聴数を増やす手段だ。単体としてのファンに、コラボを入り口としてグループ全体の推しになってもらうことで、すなわちアイドルでいうところの「箱推し」へと変える。それによりチャンネル間の回遊を増やし、総合的な動画再生数の増加につなげることができる。

にじクイ QuizKnock協力のにじクイ

 特ににじさんじの動きに顕著なところでは、昨今公式チャンネルでの「公式番組」を精力的にリリースしていることが挙げられる。共同テレビの制作協力を得てのゲームバラエティ「ヤシロ&ササキのレバガチャダイパン」(20年4月〜)の再開に加え、深夜番組をコンセプトにした「にじさんじのB級バラエティ(仮)」「クイズバラエティ『にじクイ』」(どちらも20年12月〜)などである。これらの番組にて業界最多レベルのVTuberを抱える強みをコラボレーションの多様さで見せることで、「箱」のファンを増やす。そうすることで、結果的にプラットフォームからの広告収入・企業からの広告案件のみではない収益の柱にファンを誘導することができる。ライブイベントへの集客だ。

広告以外の収益柱 ライブイベント

にじさんじ 東京ビッグサイトで行われた「にじさんじ Anniversary Festival 2021

 21年2月末、「にじさんじ Anniversary Festival 2021」が開催された。東京ビッグサイトを舞台とした初の大型フェスは、コロナウイルス感染拡大に伴いほとんどのライブステージは無観客・配信のみとなってしまったものの、20年5月にメジャーデビューを果たした「Rain Drops」を始めとした30人以上のライバーが参加。また「見たくなったタイミングからでもチケットを買える」というネット配信の強みを生かし、イベント以外にも多くの企画配信をYouTube上で無料配信。ライトなファンに対しても、「次はフルで楽しみたい」と思わせるような戦略で逆境をプロモーションに利用してみせた。

 またホロライブも、同年2月にグループ全体ライブ「hololive IDOL PROJECT 1st Live.『Bloom,』を配信限定で実施。「歌ってみた」に代表されるようにアニソンやボーカロイド楽曲のカバーが中心であるVTuber業界において、全曲オリジナル楽曲でのライブを行ったのは非常に特徴的だ。また一期生のデビュー3周年となるこの5月には、hololive 1st Generation 3rd Anniversary LIVE「from 1st」が開催される。メイン収益は配信チケットで、緊急事態宣言延長により、完全オンラインライブに切り替わった。

 オリジナル楽曲のリリース、ライブイベントの実施やグッズ販売というプラットフォームからの広告収入のみに頼らないビジネスモデル。これはキズナアイや輝夜月といった先駆者も試みていたことだが、VTuber視聴人口の増加に伴ってこの1年間で一気に加速したという印象だ。

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