「まるで監視です。小学生じゃあるまいし、なんでこの年になってサボってないかどうかを見張られなきゃいけないのか。だから、リモートはいやなんですよ。出社したほうがよほどいい」
あきれ顔でこう話すのは、某大手企業に勤める30代後半の男性社員です。
彼の会社では1回目の緊急事態宣言以降、リモート勤務が進められてきました。最初の頃は、“痛勤地獄”から解放され、社員の間でも好評でした。しかし、他の多くの会社がそうだったように、「リモート勤務は生産性を低下させる」「コミュニケーションが取りづらい」「サボってるんじゃないかと疑われるのは心外」などの不満が相次いだといいます。
そこで一部の職種をのぞき、リモートは申請ベースで許可されることになりました。
その際、会社が取り入れたのが「監視システム」。PCをクリックするだけで、業務開始と終了が記録され、席を立つ時にもいちいち「退席」ボタンを押す。また、勤務時間中は常にモニタリングされていて、上司は常に見ることができるそうです。
まぁ、部下の中にも「サボってるじゃないかって疑われるくらいなら、モニタリングされた方がいい」と思う人もいるかもしれません。しかし、冒頭の男性がそうだったように「監視されている」とメンバーが不信感を抱けば、モニタリングは逆効果です。
会社という組織の土台になる「信頼」がことごとく失われていきます。
そもそもなぜ、「監視システム」を導入するのでしょうか?
「そりゃあ、上司は部下が過重労働にならないように管理する必要があるし」
「そうそう、リモートってストレスがかかるから、鬱っぽくならないように、部下のメンタルを管理しなきゃだし」
「リモートだとコミュニケーションが取りづらいから、仕事が予定通り行われているか管理しないと生産性低下するし……」
おそらくこう考える人は多いことでしょう。もちろんこれらが管理職としての仕事の一部であることに異論はないし、部下の健康状態や残業状態を管理することは上司の役目です。
しかし、実はこれは、管理という言葉を借りた、アリバイ作りでしかありません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング