製造業の急回復で銅などのコモディティ価格が上昇し始め、米国経済が正常化すれば労働力不足となり、インフレが起こりやすくなるのでは、といったことが心配されている。さらに、米国でトランプ前政権の緊急対策に加えバイデン政権が追加的に財政を拡大させれば、自粛期間中に溜まっていた飲食などの需要だけでなく世界の総需要も急拡大し、供給が追い付かずにインフレとなる可能性がある(2020年6月の記事参照)。
しかし、これらは株価下落をもたらすとは思えない。“経済回復・正常化”→モノの価格・賃金の上昇→インフレ懸念・金利上昇→“経済悪化・株価下落”という因果は、経済回復・正常化→経済悪化・株価下落であり、矛盾しているからだ。
「金利上昇で株価は下がるのか」(リンク)でも述べたように、景気回復期待による金利上昇は、多くの場合(左図、日本の場合は81%の割合で)株価上昇をもたらした。経済回復・正常化→業績改善期待・株価上昇という因果関係の方が、矛盾の少ない見方だ。
金利が何パーセントになれば、どの程度株価が下がるのか、という質問が増えたが、「金利が上がる」ことが原因で「株価が下がる」という結果はそう多くはないし、現時点では予想していない。「悪い金利上昇」は、きわめてまれな現象である。原油価格の上昇で、代わりに天然ガスなど代替エネルギーの利用が増えても、物価全体を引き上げるとは考えにくい。
また、先進国の賃金が上昇すれば、中国のみならずメキシコやベトナムなどで生産能力を引き上げることができるので、世界的に物価が上昇するとは言い難い。逆に、ワクチン接種が進み、製造業の回復がサービス業にまで広がれば、インフレ期待の高まり≒金利上昇と株価上昇とが同居できるはずだ。
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