むろん、スシローもコロナ禍でマイナス影響を受けていないわけではない。その来店客数については対前年比でマイナスの月がほとんどであり、客単価の改善で何とか増収を達成したといってよい。
この客単価の上昇をスシローはどのように実現したのか。
コロナ以前のスシローは、繁忙時間帯の店舗での待ち時間や、駐車場のオーバーフローに悩み、既に対策を整えていた。テークアウトへのシフト体制構築や、ピーク時の待ち時間対応のためにアプリと予約システムを配備していたことが、コロナ対応に直結したわけだ。
繁忙時対応のために整えていた、接客自動化に向けた準備やオペレーションの効率化も、回転率の向上や接客の非接触化に貢献している。スシローのコロナ対応は対症療法的なものではなく、従前からの自社の課題解決に向けた努力の延長線上にあるのだ。
次に、居酒屋業界を見ていこう。大きなダメージを受けている居酒屋業態の中でも、コロワイドに注目したい。
同社は減収赤字ではあるものの、その程度は他の居酒屋各社と比較すれば、傷が浅いといってもいいかもしれない。なぜかといえば、コロワイドのルーツは居酒屋ではあるものの、これまでに異業態をM&Aで積極的に獲得しているからだ。その結果、売上構成における居酒屋の占める割合は減少傾向にあり、「既に居酒屋企業ではないから」というのが答えだ。
同社のIR資料によれば、21年3月期の売上構成は、焼肉・しゃぶしゃぶ事業が21%、回転寿司事業が25%、ステーキ事業が9%。そして新たにグループへ入った大戸屋の定食事業が10%、フレッシュネスバーガーなどのその他事業が11%、そして居酒屋事業は24%となっている。もはや居酒屋だけでなく、そこに加えて回転寿司、焼肉を中心とした多業態で構成される総合外食グループとなっていたことが分かるだろう。
回転寿司、焼肉はコロナ禍でのダメージも少なく、結果を見れば運がいいように見えるが、これは経営戦略として、多様化による業態陳腐化対策が成功している、と評価すべきだ。さまざまな業態が流行しては廃れていく外食において、業態分散によるリスク分散は戦略の「基本のキ」である。その一方で、その短い「旬」の時期に目がくらみ、集中出店して利益を最大化しようとした結果つまずく企業は少なくない(最近では「いきなり!ステーキ」がよい例だ)。
今回のコロナ禍を機に、アイドリングタイムの活用に踏み切るという対応をとる企業もいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング