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» 2021年05月27日 12時00分 公開

マニュアル化で1年目から全員酒造り 日本酒「紀土」の平和酒蔵に大卒しかいない理由平和酒造4代目が考える「個が立つ組織」【後編】(2/5 ページ)

[河嶌太郎,ITmedia]

新卒ばかり気に掛けていた

――売り上げが上がっていても、従業員の士気が低いままだったんですね。

 結局あとから分かったんですけど、新卒の社員ばかりを気に掛けていて、既にいる社員を大切にしていなかったのが原因だと気付きました。マネジャークラスのそういう古参社員を大切にしていなくて、その人たちときちんと向き合って、メンタリティーを改善することが大事だったと反省しました。

 加えて、一番が若い人を迎え入れる時に、ものを教えていくという組織作りをできていなかったということですね。

――いざ意気込んで入社しても、中堅社員が若い社員へ風当たりが強く、肝心のものを教えて技術を共有することが進んでいなかったと。

 当時の典型的な例でいうと、1年目の社員が入った時に、僕が杜氏に「この人はね、うちの未来を背負っている貴重な人材なんや。いろいろと教えてあげてくださいね」と紹介するわけです。杜氏はその時は「分かりました」と言ってくれる。

 それで杜氏は新人の子に「1階で雑用的な作業やっとけ」と指示するわけです。でも2階には、杜氏が麹造りをする「麹室」という酒作りでは花形的な部屋があるんですけど、新人の子はその麹室の現場を見たいと思うわけですね。

 それで、新人の子が作業をさーっと終わらせて2階に上がっていくわけです。すると、杜氏から「1階のお前の作業は終わったんか」と言われます。新人の子が「終わりました」と言うと、今度は「1階の隣の先輩の仕事は終わったんか」と言われ、新人が「終わっていません」と答えるわけです。それで新人の子が先輩の仕事を手伝って仕事を終え、また2階に上がっていくと、もう誰もいなくて、麹造りがきれいにされて終わっている。そんなことが3、4回あると今の若い人は、「教えてくれないんだ」「教える気持ちがないんだ」と思ってしまうんですね。

――職人の世界だと、例えば包丁を握らせてもらうまでに3年かかるみたいなところもありますが、大学を出た新卒には確かにそれは合わない気がします。

 杜氏からしたら当たり前のことを言っているだけなんですよ。自分に任せられた仕事は終わったのか、隣にいる先輩の仕事を手伝って助けてあげたのか。それはそれで一応、理にかなっているのですが、コミュニケーションが取れていないので理解し合えない。杜氏からしたら当たり前の指示だと思っているから、そこでフォローしようなんて気持ちも湧かないわけです。こうして1年間ずっと下積みをさせられると、若い人は「こんな夢のない会社やってられるか」となるわけですね。

――それで山本さんは、どんな施策を打ったのですか。

 今やっているのは「責任仕込み」といって、タンクを一人一人に任せることをやっています。大体年間で一人5、6本、自分の担当ということで、米を蒸すところ、それから麹を作るところ、酒母、発酵の途中まで全てを監修するということで、ある種、杜氏のサブみたいな形で付けてあげています。

 もう1つは、マニュアル作りです。これまで酒造りは工程が別だったんですね。AやBっていう工程というように、ABCDそれぞれの工程に職人がいました。ただ、これだとAの職人にとって、BやCの職人が何をしているのかが分からないという課題が出ます。そこで、マニュアルを作って、全ての工程で皆がやっていることを文面に落としてもらい共有することにしました。

平和酒造の柴田杜氏による酒造りの様子(リリースより)

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