19年7月に帝国データバンクが実施した人材不足に関するアンケート調査によると、非正社員だと飲食企業の80%、正社員では飲食企業の60%以上が「人材が不足している」と回答しています。農林水産省が行った調査でも、飲食店・宿泊業の欠員率は全産業と比べて2倍以上高いという状況です。
その中でも職人力を必要とする「寿司職人」は深刻な人材不足に陥っています。
話は少しそれますが、実は私もコンサルティング業界に入る前は、寿司店の厨房で働いていた経験があります。当時、任されていたのは、小魚をさばく、甘えびの殻をむく、ホタルイカの目をピンセットでつまんで取る、シャリを炊く、まかないをつくる、サラダを盛る、ドリンクをつくるといった仕事がメインでした。そのため、カウンターで寿司を握るというのは憧れの仕事でした。初めてカウンターの隅っこで「鉄火巻き」をつくらせてもらったときのうれしさは、今でも鮮明に覚えています。
昔から寿司の世界には「飯炊き3年握り8年」という言葉があり、最低でも修行に10年以上かかるとされてきました。しかし、某調理師学校の方の話によると、卒業生60人のうち寿司職人の希望者は1人だけだったそうです。寿司職人を目指す若者は年々減少しているのです。
昔からある個人の寿司店は、店主の高齢化と共に全国的に減少傾向にあるものの、回転寿司やテークアウト、宅配寿司市場は伸び続けています。また、コロナ禍でアルコールを中心とした業態が大きく影響を受ける中で、寿司業態に参入する飲食店も増加しています。
最近では、都内を中心に「金の蔵」「東方見聞録」「月の雫」などを展開する居酒屋チェーン「三光マーケティングフーズ」が、直営店の居酒屋10店舗を年内に寿司店に業態転換する方針を明らかにしました。
こうした市場成長と人材不足が相まって、寿司ロボットの需要はこれからますます高まっていくことが予想されます。
今から50年前に減反政策が行われ、市場環境が変化しました。そんな中、寿司ロボットの開発に成功し、世界トップシェア企業となった鈴茂器工。コロナ禍の巣ごもり需要や人材不足に伴う省人化というニーズを受け、さらなる躍進を遂げています。「激しく変化する市場環境」の中で未来を見据え、自社の強みを生かし、いち早く時流適応していくことの重要性を改めて学びました。
本記事がコロナ禍の影響を受ける事業者の皆さまにとって、少しでも経営のヒントになればうれしく思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント代表。数多くのテレビでのコメンテーターや新聞、雑誌等への執筆も手掛ける飲食店専門のコンサルタント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて料理長や店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う。最近では東京都の中小企業支援事業の選任コンサルタントや青森県の業務委託コンサルタントに任命される等、行政と一体となった飲食店支援も積極的に行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング