冒頭で紹介したアップルのCM動画は、スマートフォンを使って何らかの行動を取るたびに、謎のエージェントがユーザーに張り付き、広告などの手法を用いて、ユーザーの行動にほんのりと影響を与えるという、ターゲティング広告の擬人化を試みている。
「痒みにはこれがよく効きますよ」。成分的にはどれも同じ。しかし、どれでもいいなら、これがいいよ。なんて情報が目の前にあると、それでいいかと思うものだ。
しかし、謎のエージェントのアドバイスなど、誰も頼んでいない。あるいは謎のエージェントがいなければ、AではなくBという製品を買っているかもしれない。
どこか居心地の悪さを感じるこのCMは、検索キーワードが後から追いかけてくるように広告がある一定方向に染まった経験がある人ならば共感を持つかもしれない。
しかし広告業界が主張しているのは、その謎のエージェントこそが、ユーザーの知らないところで端末をより使いやすく、あふれるほどの情報の海で溺れないようにするために必要なものなのだ、ということだ。
都会に住んでいると、集合住宅の郵便受けには、実にさまざまなチラシが無造作に入れられ、いっぱいになっていることも少なくない。あるいはかつて公衆電話ボックスの利用が盛んだった頃、電話ボックスの中に大量の広告が貼られていたことを覚えているだろうか(かなりのベテランさんしか知らないだろうが)。
広告屋たちが指摘しているのは「“あくまでも匿名での”行動履歴追跡を許可してくれるのであれば、ユーザーが何者であれ、その立場について言及も記録することもなく、しかし不必要な情報を除き、ユーザーにとって有用な情報だと思われる広告だけを表示しています。だから、ATTなんてもので不安を煽る行為は、最終的にユーザーの利益にはならない。スマートフォンの使い勝手を落とすものだ」というものだ。
もちろん、この例えは行きすぎた表現といえるかもしれない。しかし同時に、互いの主張の落としどころも示している。
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