例えばアップルはATTに関して、別の動画では「あなたの近所での行動を把握しているからこそ、近所にあるお店はあなたに割引クーポンを送れるのです」と、必ずしもマイナスなことばかりではないとも伝えている。
どこの誰であるかを把握せず、単に端末レベルで匿名の行動履歴を参考に、その匿名さんにとってプラスになる電子クーポンなどが届くのなら、行きつけのお店のお買い得情報を見逃さないようにするのなら、行動履歴は渡した方がいいのかもしれない。
このこと自体を否定するものではなく、まずは許可を取りなさいというのがATTの原理原則なのだから、やましいことがないならば、許可を得ればいいでしょうという主張を積極的に打ち消せる材料はない。
全てのプライバシー情報収集を“一緒くた”にするつもりはないが、中には完全な匿名情報かどうか怪しい、あるいは確認できない場合もある。IDを取得し、実名を登録、あるいは実名登録は行わなかったとしても、個人のタイプを分類するための属性を登録した上で利用するサービス(フェイスブックはその代表格といえる)は、その消費者属性と行動履歴の分析結果をセットでマネタイズしている。
アップル流に言えば、いくら匿名であったとしても、プライバシー情報を集めて“売っている”ことを隠したまま、ユーザーに黙って商売を続けるのは不誠実ということだろう。
ではATTの原理原則は理解した上で、あらゆるアプリの利用時に許可を求めることは当然だと思うのか、それともやりすぎだと思うのか。それはユーザーそれぞれの感覚だ。
しかし、だからこそ選択肢が生まれた。
プライバシー情報の扱いについて、もっと細かく、無害、有害を説明する機会が欲しいというサービス事業者は少なくない。おそらく大多数の事業者、アプリは、少しばかりの情報を提供したからといって、個人の害になることはないだろう。
しかし、複雑な仕組みには抜け道も多くなるものだ。ではシンプルな方法は何だろう。
「プライバシー情報、渡してもいいかい?(Yes/No)」
これだけでいいという説明には説得力がある。
さて、Androidを作ったのは広告屋でもあるグーグルである。Androidが基本的に無料でライセンスされているのも、グーグルが広告を事業としているからだ。すなわちAndroidがATTに類する機能を盛り込むことはないと考えるのが妥当だろう。
とはいえ、彼らは何らかの答えを用意せねばなるまい。筆者はそのことに期待している。
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