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» 2021年05月31日 08時00分 公開

真っ先に変えるべきは日本人の「思考」 オードリー・タンが貫く「透明性」と「多様性」「前例がない」をやらない理由に(3/5 ページ)

[小林香織,ITmedia]

「多様性」は可能性を引き出すカギとなる

 台湾は、政府が認定しているだけでも16もの先住民がいて、使用言語も複数ある。近年は現地人男性との国際結婚により、台湾に移り住む東南アジア人女性が激増しており、台湾の小学校には、9.1%の割合で母親が外国出身の子どもがいるそうだ(2019年の統計より)。

 そういった環境が影響して、台湾社会全体で「人は違って当たり前」という価値観が醸成されている。オードリー氏もまた、自身の境遇から「多様性を尊重すること」を当たり前の価値観として持っているという。

 「彼女は、性別適合手術により20代で肉体的には女性へと移行していますが、自分が男性、女性のどちらかに属するとは思っていません。そういった少数派、弱い立場の人たちを置き去りにしないのは、彼らの利益や権利を守るだけでなく、社会の硬直を開放し、柔軟性を養うことにつながります」

人気の海外旅行先としてよく知られる台湾だが、オードリー氏の出現により、国全体の先進性も注目を浴びるように

 台湾では、2019年5月にアジアで初めて「同性婚」が法制化された。現地の法律では当人同士の気持ちを尊重し、遺産相続、社会保障、税金、財産の扱い、相互扶養の義務などは異性婚と同様の権利を認めている。カップルのどちらかに血縁関係がある子どもを養子にすることも可能だ。

 ただし、民法で定められた配偶者同士の姻戚関係(相手の親や兄弟も一親等、二親等とすることなど)については、国民的なコンセンサスが得られていないので、踏み込まなかった。こうして、反対派と推進派の意見をどちらもくみ取って『共通の価値観』を探し出し、両者が受け入れやすい法案に落ち着いたそうだ。

 「同性婚の法律は、まさに台湾社会に浸透した多様性が反映された象徴ともいえます。オードリーに多様性を身に付けるにはどうすればいいかと尋ねたところ、『自分とは異なるさまざまな考えを持つ人の声を絶え間なく聞き続けること』と答えました。実際に彼女は、毎週水曜に一般市民から話を聞く時間を設けており、彼女のもとには、お年寄りや主婦も訪れています」

 オードリー氏は、こういった市民の意見を現実の政策に反映させている。マスクの在庫状況を把握できるアプリ「マスクマップ」を目の不自由な人でも使えるように改良したのも、市民からの指摘によるものだった。

 日本でも、年配男性ばかりの官僚や他国と比較した女性活躍推進の遅れなどが問題視されているが、あらゆる人がこの危険性に気付くべきなのだろう。多様性が失われた社会は硬直していく一方なのだから。

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