企業増税自体はバイデン政権の政策に含まれており、すでに市場に織り込まれているが、リスクはその規模にある。
まず法人税率の水準について、バイデン大統領の公約は28%にすることであった。トランプ前政権の連邦法人税引き下げ(35%から21%へ)前に戻すわけではないが、ようやくOECD平均の約20%に近づいたのに、再び法人税率を高い水準に戻すことに抵抗が強かった。もともと主要国の中で米国の法人税率が最も高かったので、多くの企業が生産拠点を米国外に移すようになってしまっていた。
当面のバイデン政権の経済・財政政策
バイデン政権は、米国雇用計画(約2兆米ドル)という主に消費者向けの支出を行うに当たり、それを賄うための企業増税と位置付けた。格差社会の広がりに対応することは、米国経済の持続性のために適切と思われる。利益は大きいが雇用への貢献が少ない傾向にあるネット関連企業などから税をとり、人々に配分することで格差縮小につなげる政策である。しかし、高税率は米国での生産の空洞化リスクを抱えることになる。
そこで、現時点では、バイデン政権は企業増税の水準を28%ではなく25%程度に抑えるだろうと見られるようになり、市場も政権公約よりも低い増税率を織り込んでいる。これが、例えば民主党左派の巻き返しで28%などの税率となれば、市場はネガティブととらえるだろう。
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シリコン・サイクルとは、シリコンの販売額がサイクルとなって上下動している様を表す言葉だ。2017年ごろから半導体の売り上げが勢い良く伸びた時、シリコン・サイクルは過熱しているのか、本当に「スーパー・サイクル」に入るのか、などと議論されていた。この時、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)に関わる分野の成長が続いていたので、「スーパー・サイクル化」すると考えられていた。
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製造業の急回復で銅などのコモディティ価格が上昇し始め、米国経済が正常化すれば労働力不足となり、インフレが起こりやすくなるのでは、といったことが心配されている。しかし、これらは株価下落をもたらすとは思えない。“経済回復・正常化”→モノの価格・賃金の上昇→インフレ懸念・金利上昇→“経済悪化・株価下落”という因果は、経済回復・正常化→経済悪化・株価下落であり、矛盾しているからだ。
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足元、コロナ・ショックの混乱期(2020年3月から6月)に世界のエコノミストが想定した経済回復シナリオに沿って、米国の経済回復は順調に進んでいるといえる。米国を含む主要国で新型コロナウイルスの感染者が再度増加しているにもかかわらず、当初の医療崩壊懸念を含む混乱はおおむね避けられ、注目は経済回復の進度に向かっている。
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グロース株相場はいつまで続くのか、バリュー株はどうなるのか、といった質問が増えている。金利水準との関係などを話題として、どのような推移となるかを考えるアプローチもある。しかし、個人投資家にとってグロースかバリューかは重要ではない。
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エジンバラやロンドン拠点の株式・債券のファンドマネジャーから、これから5年程度の中長期で投資環境を考えるときには「世界的なインフレの可能性」を想定した方が良い、という話題が出された。後になって振り返ってみると転換点になっているかもしれない、ということだ。
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