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au、MUFGグループとのシナジーをどう生かす? auカブコム証券、石月貴史新社長(3/3 ページ)

» 2021年06月08日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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クレカ積み立ても「やらなきゃダメだ」

——銀行連携や、クレジットカードを使った投信積立に、グループとして取り組むネット証券が増えている。

石月氏 auじぶん銀行との連携は既にやっている。クレジットカードの活用もやらなきゃダメだ。若干は時間を要するが、なるべく早く形にしていく。

 クレジットカード積み立てによるポイント還元は、お互いにベースでかかるコストがあるので、一見すると収支が合わないように見えるが、同じグループ間であるがゆえにコスト低減できる部分がある。カード積み立てによって、そのカードをメインで使うようになってくると、その他のお買い物で使ってもらえるとか、金融手数料のほうにも回せるなど、カード側でもシナジーがある。当社から見ると、投信だけでなく、他商品に誘うこともできる。

 auとの組み合わせにおいてもいえるが、ある側面から見るとプロモーションだが、auがリテンションのためにコストを払っているとしたら、それをほかに振り分けても同じ。組み合わせを模索することで、コスト競争は回避できるのではないか。

——auカブコム証券は信用取引の手数料を、他に先駆けて0円にしたり、取引APIを提供したりと高機能なツールが強みの1つだ。

石月氏 他社へのシステム提供は(前社長の)齋藤(正勝)さん時代から力を入れていた部分で、今後も力を入れていきたい。惜しむらくは、システムを売るには販売チャネルが必要になるが、リソース配分がそこに行き届かなかった。具体的に「売る」という行為に力を入れていきたい。

手数料大転換

——auカブコム証券は、6月7日に手数料体系の大転換を発表した。その中では、信用手数料の無料化を廃止するほか、現物株の売買手数料などを他社の最安値にそろえ、1日100万円以下手数料無料、25歳以下実質手数料無料などを打ち出した(記事参照)。

石月氏のコメント  当社の経営ミッションである「すべてのひとに資産形成を」がその根幹だ。

 19年に実施した信用手数料の無料化も、元々は信用取引の一般化や、資産形成層のご支持を狙ったものでありこのミッションに沿ったものであったが、期待した効果を創出できなかった。今回は原点に立ち返り、お客様の視点で手数料やサービス体系を根本的に見直した。その結果が今回の大改造である。単に何かを一部上げたり下げたりしたのではなく、あくまで不変であるミッションに則った是正・転換となる。

 今後も「すべてのひとに資産形成を」の実現に向け、改善し続けるつもりだ。


——auカブコム証券では、前社長の齋藤正勝氏が長らく社長を務めてきた。今回の社長交代は、KDDIグループ体制において第二の創業にもあたる重要性を持っているように見える。

石月氏 auカブコム証券はもともとシステムに強く、とがった層に強い求心力を持ってきた。信用手数料無料化もそうだが、信用取引をやる人は相応に知見がある人。ある程度の経験者、プロへのアプローチ力が特色ある会社だった。

 ただ当社の企業理念は、「すべての人に資産形成を」だ。これまで支援していただいてファンになってもらったプロの人に対しても、今まで以上のサービスを、と思っているが、裾野を広げ、すべての人へのアプローチへ変えていきたい。auというチャネルもそうだが、広いアプローチ、幅広い人たちに愛される会社になっていきたい。

 スマホはキーデバイス。au PAYのアプリも相当にアクセスがあるチャネルになっているので、そういうところをフックにしながら、スマホアプリを充実させていきたい。

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