SmartHRがARR初公開 45億円で成長率は106% 人事労務SaaSの次の一手(3/3 ページ)
SmartHRは、もともと人事関連の「社会保険関連の面倒な手続きを便利にしたい」という思いからスタートした。国税関連の手続きが年間3800万件なのに対し、社保・労保手続きは年間1億6500万件。しかも、そのオンライン比率はわずか15%だ。
人事情報のオンラインでの収集から、社会保険などの書類の自動作成、さらに役所へのオンライン申請、そして従業員情報のデータベース化など人事労務に関する手続きの効率化を目指すSaaSとして、SmartHRは急速に浸透した。
2015年11月の正式公開から現在、無料プランも含めて導入社数は3万社以上。当時は従業員300人以下の中小企業がメインだったが、現在はその比率は3割に下がり、LINEやメルカリといったIT企業はもちろんのこと、小売りのイオン、飲食のゼンショー、JR九州などといった大企業にも導入が進んでいる。八王子市も自治体として導入しており、業種や規模を問わない。
新たに調達した資金は、収集した人事情報を活用して「働きたい環境の整備」につながる新機能の強化に充てる。これは、退職手続きを通じて集めたデータからアルバイトの定着状況を分析するなどの人材マネジメント領域の新機能だ。
調達した資金は、人事手続きから得た情報を基に分析を行う人材マネジメント機能の強化に充てる(SmartHR)
事業のKPIとしてはやはりARRを大事にする。「100億円は一つの大きなマイルストーン」(玉木氏)とし、新機能によるアップセルも含め、未上場のまま成長を加速していく考えだ。
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