しかし、いずれの事件も、悪いのは男性社員であって女子学生ではない。自分が属する企業の社会的地位を、自分の価値と混同した末の悪事であることは紛れもない事実です。
また、「“一線”を越えそうなら、きっぱりと断ればいい」と批判する人もいるかもしれませんが、それって、そんな簡単なことではない。私のような“ジャジャ馬”でさえ、若い時分、電車の中で痴漢に遭った際には怖くて声を上げることができなかった。今となってはそんなウブな時代があったなんて、自分でも信じられませんが。
だいたい“不適切行為”をした男性社員たちは、企業名を出さず、個人の名前だけで、同じような卑劣な性的行為を女子学生に強要できたでしょうか?
内定が欲しい学生たちの必死さを悪用し、「大企業の会社員」という身分を利用し、卑劣な行為に及んだ側の問題であり、犯行なのです。
そして、おそらくこれらは氷山の一角にすぎないでしょう。女子学生への不適切行為ばかりが問題になりますが、男子学生の中にもセクハラ行為に悩む人がいることも忘れてはなりません。
「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和2年度 厚生労働省委託事業)によれば、就活またはインターンシップでセクハラを経験したと回答した人の割合は、約4人に1人、25.5%もいたのです。男女別では、女性よりも男性の方が高いという結果も出ました。
男女共に、「性的な冗談やからかい」が最も多く、男子学生では女子学生よりも「性的な事実関係に関する質問」「性的な内容の情報の流布」「性的な言動に対して拒否・抵抗したことによる不利益な取り扱い(採用差別、内定取り消しなど)」が上回っていました。
前述したような不適切行為につながりかねない、「食事やデートへの執拗な誘い」は男女ともに約3割の学生が経験したという、許し難きリアルも明らかになっています。
なのに、学生たちの多くが、「セクハラを受けた」ことを誰にも言っていないのです。
件の調査で、「セクハラを受けた後の行動」を訪ねたところ、一番多かったのが、「何もしなかった」。24.7%、実に4人に1人です。その理由は「何をしても解決にならないと思ったから」(47.6%)と答えている。「何をしても解決にならない」などと、学生に言わせてしまう就活って何なのでしょうか。
「内定」という二文字には、学生にとって大人の想像をはるかに超える“重さ”がある。何が何でも内定がほしい。少しでもいい会社に入りたい──。そんな思いから、誰にも相談できず泣き寝入りしている学生も、かなりいるのではないでしょうか。
問題はそれだけにとどまりません。
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