フジテレビの女子アナ“ステマ”疑惑が突き付ける「※ツイートは個人の見解です。」のウソ会社と“個人SNS”の関係(4/6 ページ)

» 2021年06月12日 11時59分 公開
[霜田明寛ITmedia]

ある旅行会社の対応

 もちろん、メディア企業に限らず、最近では自社でSNS運用のルールを策定するところも多い。例えば、ある旅行会社では、海外や国内を問わず仕事で行った旅行先の写真を個人のSNSに掲載することはNGという規定を設けているという。いろいろな場所に行けるという会社が与えた特権を、個人の利益に結び付けるのはNGという線の引き方だ。

 フジテレビの女性アナウンサーでいえば、局によって不特定多数の人に見てもらえる放送にのること、フジテレビというブランド力を得られること、タレントと共演できることなどが特権といえるだろう。フジテレビのアナウンサーというだけでフォロワー数が伸びるSNSアカウントは、嫌な言い方をすればフジテレビのブランド力を“着服”しているともいえる。では、その“特権の着服”の上に成り立っているアカウントである以上、自由な投稿は許されないのか。

 そして、どこまでが“特権の着服”なのだろうか。今回、問題になったアナウンサーの1人は、学生時代から使用していたInstagramのアカウントを、フジテレビ社員になってもそのまま使用している。その場合「入社日前日までに彼女をフォローしていた人(=フジテレビのブランド力を使用せずに獲得したフォロワー)には自由に影響力を行使していい」という理屈もまかり通る気がするがどうなのか。

 その他の、入社後にフジテレビアナウンサーとしてアカウントを作成した人の場合、そのフォロワ―の何割が「フジテレビアナウンサーである」というブランドに魅力を感じてフォローした人なのか。

 このように、有名企業の会社員が個人でSNSを使用している場合、どこまでが会社のフォロワーで、どこまでが個人のフォロワ―なのか、線引きが難しい。

 しかし、個人のSNSである以上、彼らの多くは全てのフォロワーを自分の力で得られたかのような錯覚をする。ここが問題の起点になる。社員個人のSNSアカウントの権利は、企業に属するものとする――などとしたら、企業をやめる社員も出てくるかもしれない。

ある旅行会社では、海外や国内を問わず仕事で行った旅行先の写真を個人のSNSに掲載することはNGという規定を設けているという

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