コロナ禍で「銀のさら」絶好調 創業社長が語る“稼ぐ”仕組みとライバルが淘汰された背景長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

» 2021年06月15日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

宅配寿司初の全国チェーンを目指す

 こうして、98年にサンドイッチ店の一角で、宅配寿司を始めてみた。案外と好調で、宅配をするのならば寿司のほうが市場が広く、原価も安く済むことが分かってきた。

 サンドイッチというと、日本人が思い浮かべるのは三角サンドで、サブウェイのようなオープンサンドは今も一般的でない。自分たちで市場をつくらなくてはならず、使用するトマトやレタスの価格も意外と高い。パンを焼いて具材を挟んで400円で売っても、さほど利益は出なかった。

銀のさらで人気の桶「匠」1458円(出所:ライドオンエクスプレスHD公式Webサイト)

 一方、寿司は日本人なら誰でも知っているし、トロをさっと握るだけで700円くらい取れる。サンドイッチとは商売の筋が全然違うと判断し、本業を宅配寿司にシフトした。

 2000年にはブランド名を「寿司衛門」から「銀のさら」に変更。翌01年には、「牛角」「サンマルク」「まいどおおきに食堂」「タリーズコーヒー」などのFCを次々と成功させ、飛ぶ鳥を落とす勢いであったベンチャー・リンクと業務提携して、宅配寿司初の全国チェーンを目指した。

 当時のベンチャー・リンクは、後に没落の一因となる大きな弱点を抱えていた。店舗を出したくても適当な物件がなく、FCオーナーと契約した後に店舗がなかなか開けられないケースが続出していたからだ。その点、店内飲食スペースが不要な宅配寿司は、四等、五等の立地でも成立する。立地に左右される一般の飲食店に比べれば、店舗開発がしやすかった。

 銀のさらは01年10月にFC募集を開始。ベンチャー・リンクとの提携効果はすさまじく、わずか9カ月後の02年7月には、100店舗を突破。その4カ月後の02年11月には200店舗に達した。同年、本社を東京に移転している。

銀のさらで人気のランチメニュー「特選ランチ握り」950円(出所:ライドオンエクスプレスHD公式Webサイト)

 立地が悪くてもブレークした業態に、持ち帰り寿司の「小僧寿し」という先例があったが、スシローを始めとする4大回転寿司チェーンに押されて縮小を余儀なくされていた。入れ替わるように銀のさらが入っていった側面もあった。

 また、街の寿司店も回転寿司に押されて閉店していったが、出前の需要を銀のさらが代わりに取っていった。

 こうして一気にライバルチェーンを蹴散らし、銀のさらは宅配寿司で圧倒的な地位を築いた。ベンチャー・リンクは残念ながら倒産したが、ライドオン・エクスプレスは自力で13年に東証マザーズ市場へ上場。15年には、東証一部に指定替えとなっている。

 なお、宅配寿司のみならず宅配ピザも含めて、自前の配送網を持つフード宅配の国内上場企業は、ライドオンエクスプレスHDだけだ。銀のさらの店舗数は今年3月末時点で357店となっている。

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