次に、FBIはどういった行動に出たのか。逮捕した業者らを使って、新たなシステムを作り、犯罪組織にばら撒(ま)く作戦に出た。見返りは、12万ドルの報酬と、6万ドルほどの経費である。そして、完成したのが「ANOM(アノム)」と呼ばれるスマホとアプリなのだ。
実はこの業界、競合となるサービスがいくつかある。FBIは、このANOMを広くばら撒き、犯罪者の中でシェアを拡大するため、強引な手段に出ている。ファントム・セキュアの関係者らへの捜査によって、存在が明らかになったライバル業者スカイグローバル社を摘発。また「EncroChat(エンクロチャット)」という暗号化で安全な通信をウリにしていたデバイスも、当局がその利用者を特定し、次々と逮捕者が出る事態になった。これらの逮捕劇の裏側には、多くの人間にANOMを使わせる狙いがあったと見られている。
さらに、転機となったのは、闇世界で知られた大物犯罪者の行動である。オーストラリアの麻薬密売人ハカン・アイクがANOMを使い出したことだ。彼はトルコ系オーストラリア人で、世界各地で麻薬密売組織を運営。オーストラリアでも、最重要指名手配犯として知られる存在だった。最近では拠点をトルコに移していたが、フェイスブックで筋骨隆々の体の写真をアップするなど「フェイスブック・ギャングスター」と呼ばれていた。
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