アイドリングストップ機構によるエンジンの再始動がエンジンや電装品の負担となり、エンジンオイルやバッテリーの寿命を縮めてしまうことは、これまで述べた通りである。一方、近年登場してきたアイドリングストップ機構を搭載しないクルマたちは、それらのデメリットを解決しただけでなく、さらに進化を果たしている。
その代表例がトヨタ・ヤリスであろう。先代モデルのヴィッツと比べると、同じ1.5リッターエンジンでCVT仕様のカタログ燃費を比べると、ヴィッツの1リットルあたり21.2キロに対しヤリスは21.6キロと同等以上の数値となっている。
トヨタ・ヤリスに搭載されている1.5リッターの直列3気筒エンジンと、発進ギア付きCVTの組み合せによるパワーユニット。ヤリスはハイブリッドの超省燃費ぶりに話題が集中しがちだが、1.5リッターガソリンエンジンの出来が秀逸だからこそ、ハイブリッドの燃費性能も実現できたことも見逃せないしかもこれは前述の通り、新しい燃費基準であるWLTCモードであり、その内容的にはずっと厳しいものだ。ユーザーによる平均実燃費を比べてみても、両車とも15〜16キロとほとんど差がない。つまり、市街地中心のユーザーでもアイドリングストップを使っているクルマと同等の燃費を確保している、ということだ。
ヤリスのエンジンは同じ1.5リッターエンジンでも直列4気筒から3気筒へと、レスシリンダー化(実際には2リットル4気筒とのモジュラー化だが)されている。これによってシリンダーのボア(直径)とストローク(行程)をより最適化して、負荷による吸気量や燃料噴射量の調整もより幅広く制御することを可能にしているのだ。
バッテリーや発電機のコストダウンや軽量化も図れる。これはランニングコストだけでなく、LCA(ライフサイクルアセスメント=材料の製造時から廃車後のリサイクルまで含めたCO2の総排出量)で評価されるとなれば環境性能にも差が出てくる部分だ。
さらに始動時に負担が大きいタイミングベルト(ヤリスのエンジンはチェーンを使用)の強度にも余裕ができて、ベルトサイズを細くできることでカムスプロケットやテンショナーもサイズダウンによる軽量化が図れることになる。
このようにトヨタのTNGAパワーユニットには、すべてに渡って無駄のない設計と製造技術が注ぎ込まれ、従来以上に魅力的なエンジン&変速機に仕立てられている。
トヨタTHSは、どうして普及しないのか そのシンプルで複雑な仕組みと欧州のプライド
シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択
SKYACTIV-Xは見切り発車か確信犯か 最新のICTに熟成を委ねたマツダの強かさ
トヨタがいよいよEVと自動運転 ライバルたちを一気に抜き去るのか、それとも?
ホンダの「世界初」にこだわる呪縛 自動運転レベル3に見る、日本の立ち位置Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング