昨今、エンタメ業界を中心にNFT(Non-Fungible Token)が広がりを見せている。
NFTとは、ブロックチェーン技術を用いることで、唯一性を付与されたデジタルデータおよび、そのような唯一性の付与に関連する認証技術の総称いう。このNFTにより、従来、コピーが容易であるため、価値を付与しにくいとされてきたデジタルデータに、技術的に唯一性を付与することが可能となった。例えば、Twitter創業者のツイートがNFTとして、約3億円で落札されたことは有名だろう。
ただし、実のところ、NFT取引において何が取引されているのかが明確になっていない場合が多く、現在の日本の法律においては、NFTを「所有」できないという点には特に誤解が多い。そこでまず、NFTの法的な性質を検討し、その上でNFT取引において当事者が気を付けるべき留意点を解説する。
NFT取引において、対象のNFTがデジタルアートであれば、当該デジタルアートの「データ」を取引対象とすることになるが、データであるNFTにおいて、「所有権」は認められるのだろうか。
この点について、日本の民法は所有権の対象となるものを「物」(民法第206条)であると規定しており、「物」とは「有体物」を指すと解されている(同法第85条)。そして、少なくとも現行の解釈上において、NFTはあくまで電子データであり「有体物」とはいえないため、「物」とはいえず、民法上の所有権の対象とはならない(これは暗号資産なども同様である)。
従って、日本において、現行法上、NFTに「所有権」は認められないのである。
この点、NFTに関連する文脈で所有・所有権・デジタル所有権といった用語を用いている記事なども散見されるが、取引における誤解を招きかねないため、NFTを「所有」しているという表現ではなく、「保有」していると表現するべきであろう 。
なお、例えば誰かが亡くなってしまった際に、登録していたアカウントや、NFTと同様に「所有」できない暗号資産などの財産の処理を円滑に行うために、デジタル資産に管理・処分権を認めるといった議論もある。これらの議論の派生として、今後いわゆるデジタル所有権を法定することも考えられるが、少なくとも現在の日本にはデジタル所有権を認めた法律はないため、「NFTはデジタル所有権の対象となる」といった説明はできないのだ。
このように、法的には所有できないNFTではあるが、購入する人はどういった点に魅力を感じているのか。なぜここまで話題になっているのか。
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