唯一無二の「本物」のデータを自分だけが事実上保有することで、コレクター欲を満たせる点には需要を見いだせるだろう。このコレクター欲にどれだけの価値を(利用者が)見いだすかというところが、重要なポイントになる。
そして、NFT自体が資産価値を有しているため、絵画などに代わる投資対象としての利用も考えられる。NFTの対象となるアート作品のファンにとっては、新たなグッズができたような感覚かもしれない。
また、スマートコントラクトの機能を用いることで、NFTが2次流通される際に生じる収益の一部を、原作者に還元する仕組みも導入可能だ。欲しいものを購入できて、かつ原作者に直接利益還元できる仕組みは、昨今の投げ銭ブームなどにみられる、ファンによる支援の新たな形という文脈においても、一定の需要があるサービスといえよう。
さらに、NFT化による新規ファンへのアプローチという側面から、作品の新たな露出の場としての期待もできる。例えば、NFT購入の動機が転売益であったとしても、いざ購入したことをきっかけにその作品の魅力に気付くかもしれない。投機目的でNFTを探しているときに、すてきな作品に出会うこともあるだろう。その意味で、クリエイターにとっても消費者にとっても、NFTは新たな可能性を秘めた市場を形成しているといえる。
もっとも、このようなNFTの魅力を論じるに当たっては、NFT取引の当事者が、自分たちが一体何を取引しているのかをしっかりと理解していることを当然の前提とするべきことは言うまでもない。
さて、NFTが(現行の)法的に「所有」できない点や、それでも話題となっている理由をまとめてきた。ここからは、買い手と売り手、双方の視点から、NFTビジネスにおける留意点を掘り下げていく。
まずは、そもそもNFTでは何を売買しているのかという点だ。日本において、法的にNFTに所有権を認められないのならば、NFT取引において、一体何を売買していることになるのだろうか。
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