1ツイートが3億円! NFTは、結局何が魅力的で、何を取引しているのかNFTの法的な性質と取引における留意点(5/5 ページ)

» 2021年06月22日 05時00分 公開
[高橋駿ITmedia]
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 具体的には、資金決済法、金融商品取引法、銀行法、刑法(賭博罪等)、景表法などの各法に対する該当性が問題となる。これらの点については、2021年4月26日に、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会が公表した「NFTビジネスに関するガイドライン」 に詳しいが、個別具体的なスキームごとに緻密な検討が必要となるだろう。

出所:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会「NFTビジネスに関するガイドライン」

 このように、NFT取引においては、そもそも法的に何を売買しているのかが明確ではない場合が多く、それに起因する不確定要素をはらんでいる。従って、利用者保護の観点からは、売買に伴う法的トラブルが生じないよう、プラットフォームを提供する事業者側が、規約などで、ある程度NFTの性質について説明することが望ましい。一方で、利用者側も自分たちが一体何を取引しているのかしっかりと意識することが望ましい。

 仮に、購入後にNFTの価格下落などを受けて、「思っていたものと違った」と主張したところで、法的責任を誰かに負わせることはまず難しいだろう。従って、取引当事者は、実際に売買されているものが何であるのかを確認した上で(それは、「NFTデータを保有できる事実上の地位」にすぎないのかもしれないし、ある種のライセンスなどの権利が付加されたものかもしれない)、当該NFTの取引価格が、それに見合った適正なものであるのか否かも含めて、慎重に判断する必要がある。

 結局のところ、当事者が、NFT取引で何を得られるのかをしっかりと理解し、かつ価格の下落のリスクも承知した上で、それでも購入したいのだと納得できていないのであれば、投機目的で安易に手を出すことは望ましい結果を生まないだろう。

 なお今回は深く言及しなかったものの、NFTを法的に所有できないことにより生じる問題として、相続の対象となるのか、高額なNFTには担保設定の需要も考えられるが有効な担保設定をどのように行うのか、税務上どのように取り扱われるのか――といった問題もある。これらはNFTの法的性質を整理した上で検討すべき課題であり、今後の議論の活発化が待たれるところである。

 NFTは、特に昨今経済的に大打撃を受けているスポーツビジネスやエンターテインメント業界と相性が良く、大きな収益源となる可能性もあるため、既に動いている実務と並行しながらNFTに関わる法的な解釈を固め、売買当事者が納得のいく健全な市場が早期に構築されることが期待される。

著者プロフィール・高橋 駿(たかはし しゅん)

弁護士、シティユーワ法律事務所所属。

2016年、早稲田大学法学部卒業。2018年、早稲田大学法科大学院卒業。

2019年、弁護士登録(第二東京弁護士会)、シティユーワ法律事務所入所。

企業法務、金融業務の他、スポーツ法務に注力している。

スポーツ法学会、第二東京弁護士会スポーツ法政策研究会に所属。MSBS第1期。


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