1ツイートが3億円! NFTは、結局何が魅力的で、何を取引しているのかNFTの法的な性質と取引における留意点(3/5 ページ)

» 2021年06月22日 05時00分 公開
[高橋駿ITmedia]

 この点については、NFT取引を展開しているプラットフォームの規約などを確認する必要があるが、実のところ、規約においても明確に説明されていないものが多い。従って、NFTの売買において何が取引されているのかが明確になされていない商品も存在しているというのが実情である。

 この点、個別の取引ごとに当事者間でNFT取引における売買対象を約定するという方法も考えられるが、売買取引における流動性が一つの売りとなっている現状のNFT取引において実際的ではない場合もあるだろう。

 そこで、プラットフォーム側が用意する規約によってある程度の説明を行い、利用者の保護を行うのがベターであるといえる。

 ただし現状では、国内のNFTサービス規約において、売買などで対象となっているものが何であるのかを明示していないものもあり、かつそのことによって売買当事者間で生じるトラブル等に一切の責任を負わないような定めがされているものもある。利用者はこのような規約にも目を通した上で、当該サービスを使うか否か冷静に判断するべきといえる。

NFT法的の問題点(1)「唯一無二性」の担保

 NFT取引において、売買当事者はどのような点に注意すればよいのだろうか。

 そもそも、NFT取引において、その価値を担保しているのは、かかるデジタルアートが「唯一無二の固有性」を有する点である。

約75億円で落札された、NFTアート作品「The First 5000 Days」(出所:クリスティーズWebサイト)

 例えば、オリジナルの原作者が、別のプラットフォームで全く同じデータ作品をNFT化することが規制されていない状態では、固有性に基礎を置く当該NFTの価値は常に暴落のリスクを抱えた商品となってしまう。

 加えて、仮にオリジナルのデータを別のプラットフォームで展開することを禁じたとしても、オリジナルデータの一部を改変し、別の著作物として展開することで、容易に唯一性は失われてしまう。具体的には、「世界に一つしかありません」という売り込みで特定のNFT商品を売った後に、色を変えただけのデジタル作品を作り、「これも世界に一つしかありません」といって販売することなどが想定できる。この場合、既に流通している当該NFTの希少性が失われ、価値が暴落する可能性がある。

 このようなことが行われたとしても、著作権が原作者に留保されることが一般的である現状のNFT取引においては、買主からの有効な対抗手段を考え難いのが問題だといえる。従って、プラットフォームが定める規約などで、これらの疑似複製的な行為を原則禁止するなどの手立が必要となるだろう(なお、現実問題として、原作者が自らの作品の価値をおとしめる疑似複製的な行為をする可能性は低いと思われるが、その可能性がある以上、NFTの価格形成への影響は免れられない。従って、設計上の手当ては必要と考える)。

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