個人向け家計簿アプリ「マネーフォワードME」が、個人向け資産運用の領域に乗り出す。6月23日、マネーフォワードは個人向け資産運用サービスを提供するSUSTENと資本業務提携を発表した。1200万人が利用し、口座連携されている資産額は合計15兆円にのぼるマネーフォワードMEのユーザーに向けて、資産運用の機会を提供していく。
マネーフォワードのデータによると、マネーフォワードMEユーザーの6割以上が資産運用を行っていない。さらに3割は、投資に振り向けてもいい余剰資金があるにもかかわらず、預貯金のまま保有している状況だ。
そんなユーザーに対し、データを元に理想的なポートフォリオと投資額を提案し、また保有資産と投資額に応じた資産運用シミュレーションを行うことが重要だと、マネーフォワードは見る。そのため、マネーフォワードが持つ家計および資産のデータと、SUSTENが持つ資産運用ロジックを組み合わせることで、運用提案や運用シミュレーションを2022年春をめどに共同開発する。
SUSTENは19年7月に創業した資産運用のスタートアップだ。21年2月にサービスの提供を開始して以来、預かり資産額を約13億円まで伸ばしてきた。今回、マネーフォワードと業務提携するとともに、マネーフォワードファンドを含む複数者から6億円の資金調達を行い、サービス開発やマーケティングに充てていく。
SUSTENの特徴は3点ある。ユーザーのリスク志向などに応じて異なるポートフォリオを投資一任契約によって作るところは一般的なロボアドバイザーと同じだが、投資先はETFではなく、同社が運営する3つの投資信託であることだ。投資信託を使うことで、リバランスなどによる含み益に課税されることなく低コストで運用できる。
2つ目の特徴は、預かり資産に応じた一律の手数料体系ではなく、預けた資産が増加した分の一部を支払う完全成果報酬型である点だ。ユーザーは、資産が増加したら、その一部を手数料として払うだけで、入金や取引、また預かり資産額に対してのコストはかからない。
3つ目は、景気に連動しない絶対的な収益(相対に対する絶対)を追求するファンドを持つ点だ。株式を中心としたファンド、債券を中心としたファンドはロボアド各社もETFを通じて投資対象としているが、絶対収益を追求するファンドは例がない。株式や債券価格と連動せず、空売りも組み合わせることで、絶対的な収益獲得を目指す。
SUSTENの岡野大社長は、「良い商品がなかなか提供できない、リーズナブルに提供できない。例えば、多くの運用会社は証券会社や銀行の子会社でしかないので、理想的な商品を組成しても、販売会社に提供しにくい。売りやすい、キャッチーな商品ばかりを並べて残高を増やしてきた。この課題は、業界全員が感じているのではないか」と話し、機関投資家同様の商品を、コストを下げながら安価にユーザーに提供することに意欲を示した。
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