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100年近くレシピの変わらない「崎陽軒のシウマイ」が今も売れ続ける理由崎陽軒・野並社長、経営を語る【後編】(3/4 ページ)

» 2021年06月29日 08時00分 公開
[伏見学ITmedia]

良心的な仕事

 もう一つ、経営において野並社長が重視するのが、「良心的な仕事」をすることだ。

 「100年、さらに100年と、企業が永続するには、顧客を裏切らない良心的な仕事を心掛け、より良い品質の商品やサービスを提供していくべきです」

野並社長のアイデアボックス。経営者の心得などがメモにびっしりと書かれている

 良心的な仕事を象徴するようなエピソードを野並社長は披露する。

 2013年、複数のレストランにおいて、伊勢海老をロブスター、芝海老をバナメイエビなどと、メニュー表記と異なるエビを提供していた問題が起きた。

 そのころ、崎陽軒の取引先で、お節料理を作る会社から野並社長が言われたのは、「崎陽軒はこの騒動に巻き込まれないはずだ。ちゃんと伊勢海老を使っていたからだ」。この会社はいろいろな食品メーカーのお節料理を手掛けていたため、内情がよく分かっていたのである。

 こんな出来事もあった。日本農林規格等に関する法律(JAS法)では、重量割合の大きい順に原材料名を記載しなければならないが、2007年、同社のいくつかの商品で表記の順序に誤りがあった。商品の品質上は問題ないが、農林水産省に自ら申し出て、自主回収を始めた。

 ルール順守は企業として当然のことであり、崎陽軒の行動が特段優れていたわけではないだろう。ただし、当時はさまざまな企業による食品偽装が横行していただけに、崎陽軒に対して好意的な評価も少なからずあった。

 「会社のための経営ではなく、自分の報酬を上げるための経営をする社長もいますが、それでは会社にとって短期的な利益しかもたらしません。100年、200年と長いスパンで会社のことを考えていくには、常に良心的な仕事をする必要があります」

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