この「崎陽軒イズム」を次代に継承していくことが、今後の野並社長の役目だろう。これに関して、「伝統を守ることについては、消極的な解釈と積極的な解釈の2つがある」と、野並社長は独自の見解を示す。
消極的な解釈とは、先人と同じことをやって、その後ろをなぞっていくこと。一方、積極的な解釈とは、先人と同じものを目指すことだという。
「例えば、高校野球の名門といわれる伝統校は、先輩が甲子園を目指して頑張っていたから、俺たちも甲子園を目指すのだという共通意識があります。片や、先輩が坊主頭にしていたから、俺たちも坊主にしようというのは、伝統の継承とはいえません」
野並社長は続ける。
「崎陽軒に置き換えると、先輩がシウマイ弁当を作ってくれたから、それを後生大事に売っていればいいという考えではいけません。先輩が『横浜の名物がないなら作ってしまおう』とシウマイを世に出したように、われわれもシウマイだけでなく、新しい名物を作っていこうと考えるべきです。これが積極的な意味での伝統の継承です」
守るべきものは守り、変えるべきものは大胆に変えていく。ただし、そのいずれにおいても、ひと様に後ろ指をさされることはないよう、常に良心的な仕事をまっとうすべきである。崎陽軒に根付くこの経営哲学が、これから先も受け継がれていくとともに、多くの日本企業にも広がっていくことを願う。
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
コロナ禍でも不文律破らず 「シウマイ弁当」崎陽軒が堅持するローカルブランド
借金100億円をゼロにした崎陽軒・野並直文社長 横浜名物「シウマイ」を救った“2つの変革”とは?
神奈川県の住みここちランキング 3位「横浜市青葉区」、2位「横浜市西区」、1位は?
神奈川県の住みここちランキング 2位「葉山」、3位「横浜市青葉区」を抑えて1位となったのは?
午後7時閉店でも店長年収1000万円超え! 愛知県「地元密着スーパー」絶好調の秘密
お金なし、知名度なし、人気生物なし 三重苦の弱小水族館に大行列ができるワケ
JR東海の新型車両「N700S」7月1日運行開始 ミルクボーイや崎陽軒との「Supremeコラボレーション」でPR
リニアを阻む静岡県が知られたくない「田代ダム」の不都合な真実
JR東海の新型車両「N700S」 プロモーション第2弾を展開
内気な野球少年が悲しみを乗り越えて大人気水族館の「カピバラ王子」になるまで
ホリエモンが政治家に頭を下げてまで「子宮頸がんワクチン」を推進する理由
ドラゴンボールの生みの親 『ジャンプ』伝説の編集長が語る「嫌いな仕事で結果を出す方法」
水族館の館長さんが『うんこ漢字ドリル』に感化されたら、こんな商品が生まれました
フリーアドレスはもう古い 働き方を根本から変える「ABW」の破壊力
ガス会社勤務だった女性が「世界最大級のデジタルコンテンツ会社」を率いるまで
「最近の若い奴は」と言う管理職は仕事をしていない――『ジャンプ』伝説の編集長が考える組織論Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング