人口8万人ほどの愛知県蒲郡(がまごおり)市にある竹島水族館は、お金なし、知名度なし、人気生物なしという、いわゆる弱小水族館だ。だが、条件面だけ見れば「ショボい」としか言いようのないこの水族館は、わずか8年前は12万人だった来場者数を40万人まで「V字回復」させた。その理由はどこにあるのか。個性集団とも言える飼育員たちの「チームワーク」と「仕事観」に迫り、組織活性化のヒントを探る――。
飼育中のカピバラをあらゆる角度から撮影して作成したリアルなパッケージ。そのお尻部分を開けると、黒々としたウンコならぬチョコ菓子が現れる。そういえば、カピバラの表情は心なしか「いきんで」いるように見える――。
筆者が住んでいる愛知県蒲郡市が誇る竹島水族館が開発したこの土産品。長い海外滞在から帰国して間もない女友達に手渡すと、約1秒間の沈黙の後に爆笑。泣きそうな表情で喜んでくれた。食べ物をウンコに見立てるという禁忌を、カピバラのとぼけたかわいさが明るいジョークに昇華しているのだ。
商品名は「カピバラの落し物」。2018年1月の販売開始から6000個以上の販売実績がある。ゴールデンウィークや夏休みには1日120個以上も売れ、生産が追い付かずに欠品をしてしまった。水族館の土産品としては異例の売れ行きだ。
独走気味に開発を推し進めたのは小林龍二館長。自由に動けたのは他の飼育員たちのおかげだと謙遜する。
「僕がみんなと同じぐらいに(飼育する魚や動物の)担当を持っていたら、開発のために打ち合わせをする時間は取れませんでした」
自らアシカショーも担当する小林さんだが、以前に比べるとルーティンワークは減らせている。その分だけ水族館の将来を支えるような新しい企画に時間と労力を割けているのだ。
カピバラの落し物の成功は外部の力に寄るところも大きい。小林さんは16年の春には「超グソクムシ煎餅」というヒット商品を生み出している(関連記事参照)。その際の開発メンバーは、愛知県豊橋市での経営者勉強会で知り合った人たちで、パッケージ(菓子箱)・お菓子・デザインのプロが偶然にもそろっていた。超グソクムシ煎餅の開発と販売を通じて、小林さんは彼らと強い信頼関係を構築。LINEグループを作り、気軽にメッセージを交わしている。
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